根こそぎ動員とは？意味をやさしく解説

根こそぎ動員とは

根こそぎ動員とは、太平洋戦争末期に、日本軍が本土防衛のために行った大規模な兵力動員を指す通称です。連合軍の接近に対抗するため、兵力不足を補うべく、老若男女を問わず、多くの人々が戦力として動員されました。この動員は、主に本土と満州地域で行われましたが、沖縄などの南西諸島でも同様の動員が行われました。

本土における根こそぎ動員

本土決戦に備え、日本軍は3回に分けて師団の増強を行いました。これにより、40個師団、16個独立混成旅団、6個戦車旅団が新たに編成されました。これらの師団は、沿岸配備師団と機動打撃師団に大別されます。

沿岸配備師団: 主に海岸線に配備され、敵の上陸部隊を拘束する役割を担いました。構築された横穴陣地やトーチカからの攻撃で敵を足止めし、内陸部に配置された機動打撃師団の攻撃を支援する任務を遂行しました。しかし、その任務から「はりつけ師団」や「かかし兵団」と揶揄されることもありました。一部の連隊には反撃能力を持たせるため、馬を多く配備するなど機動性を確保する試みもありましたが、第三次兵備では武装すら満足に供給されない状況でした。
機動打撃師団: 沿岸配備師団が敵を拘束している間に、出撃して攻撃をかける役割を担いました。火力や機動力を重視して編成されましたが、人員は根こそぎ動員で確保したものの、十分な装備が行き届かず、沿岸配備師団と大差ない状況でした。

これらの動員により、53個師団、2個戦車師団、4個高射師団、22個混成独立旅団、7個独立戦車旅団、3個警備旅団、総勢315万人が動員されました。

満州における根こそぎ動員

満州では、関東軍の兵力補充のため、1945年1月に残存兵力の再編成が行われ、8個師団と4個独立混成旅団が編成されました。さらに、7月には満州に在住していた日本人15万人と、在郷軍人25万人が動員され、9個師団と7個独立混成旅団が新設されました。これらの部隊には、関東軍特種演習で満州に輸送されていた装備が使用されました。

その他の地域

沖縄などの南西諸島でも、鉄血勤皇隊などの組織で15歳以上65歳未満の住民が戦闘員として徴用されました。

他国における同様の事例

根こそぎ動員は、ナチス・ドイツなど、他国でも行われています。また、連合国側でも、戦時体制下で徴兵対象を拡大し、法律上は高齢者の動員を許容する体制が採られていた時期がありました。しかし、非人道的な徴募は社会不安を招き、国家転覆に繋がる危険性も孕んでいました。

根こそぎ動員の教訓

根こそぎ動員は、国家が非常事態に直面した際に、国民を総動員する手段として行われることがあります。しかし、その過程で、国民の生活や権利が無視され、深刻な人権侵害に繋がることもあります。また、十分な装備や訓練が行われないまま動員された兵士は、戦力として十分な働きができず、悲惨な結果を招くことも少なくありません。根こそぎ動員は、国家の存亡をかけた非常手段ではあるものの、その実施には慎重な検討と、国民への十分な配慮が必要であるという教訓を私たちに示しています。

脚注

戦争末期における大量動員によって編成された師団並びに独立混成旅団など
沖縄県における根こそぎ動員：全島要塞化と根こそぎ動員（読谷村史）

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