根岸流 (書風)

根岸流とは

根岸流（ねぎしりゅう）は、江戸文字の一種であり、相撲字と呼ばれています。この書体は、江戸時代の相撲会所において重要な役割を果たした三河屋根岸治右衛門兼吉（みかわや ねぎしじえもん けんきち）によって創始されたとされています。根岸流は、江戸時代の公用書体であった「御家流」に代わって、明治時代に普及しました。

特徴

根岸流の特徴は、他の書体とは異なる点が多くあります。特に勘亭流（芝居文字）や橘流（寄席文字）と同じく筆太に記されることが多いですが、隙間が少なく直線的なスタイルが際立っています。さらに、木偏の漢字の表現においては、バランスを取るために木かんむり（例：「松」を「枩」と表記）を使うことがあります。専門の知識を持たない読者にとって、これらの特徴は一見わかりにくいかもしれませんが、書体の象徴性を高めています。このように、根岸流は「力文字（ちからもじ）」とも呼ばれ、力士たちが互いに力を出し合う様子を反映しています。

歴史的背景

創始者である三河屋根岸治右衛門の姓を冠した根岸流は、明治中期に根岸治右衛門兼吉によって確立されました。根岸家は相撲会所の年寄としても運営に関与し、1952年には10代目根岸治右衛門が年寄名跡・根岸を返上。この結果、大相撲番付は日本相撲協会に移行しました。現在も根岸流は行司に受け継がれ、相撲場での告知や番付に使われています。

行司と根岸流

行司の修行においては、根岸流の習得が必須とされています。この書体を使うことは、土俵上での捌きと同じくらい重要視されています。戦後、日本相撲協会の番付書きを担当した者としては、5代式守勘太夫や24代木村庄之助、10代式守与太夫、30代木村庄之助などが知られています。これらの行司は、根岸流の能筆として評価されています。特に、32代木村庄之助は番付を書くことはなかったものの、その筆技が高く評価されました。

2023年3月場所からは、戦後8人目となる幕内格行司の2代木村要之助が大相撲番付の筆者を務めています。これにより、根岸流の伝統が引き続き受け継がれることが期待されています。根岸流は、日本の相撲文化に欠かせない要素であり、その美しい書体は現在も多くの人に親しまれています。

まとめ

根岸流は、相撲と共に育まれた文字の一つであり、その美しさと力強さは、日本の伝統文化の中で非常に重要です。書体の特徴や歴史を理解することで、相撲の深奥な世界に触れることができるでしょう。

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