根本知

根本知

根本 知（ねもと さとし）氏は、1984年に埼玉県越谷市に生まれた日本の書家、書道学者です。学術的な探求と創作活動、教育者としての役割を多角的に展開し、現代における書の可能性を追求しています。

学術研究と教育活動

根本氏は、大東文化大学大学院の博士課程で書道学を深く研究しました。その成果が認められ、2013年には書道学の博士号を取得しています。この学問的な背景は、その後の教育活動および創作活動の基盤となっています。

博士号取得後、根本氏は教育者としての道を歩み始めました。2013年からは大東文化大学文学部書道学科の非常勤講師として、後進の指導にあたります。その後も、放送大学教養学部（2019年より）、大東文化大学第一高等学校（2020年より）、相模女子大学学芸学部（2020年より）といった様々な教育機関で非常勤講師を歴任し、幅広い層の学生に書道の魅力と奥深さを伝えてきました。現在は、立正大学文学部文学科日本語日本文学コースの特任講師として、引き続き大学教育の現場に携わっています。

大学での教育活動に加え、一般向けの書道普及にも力を入れています。各地でかな書道やペン習字の講座を開講し、多くの人々が美しい字を書くための手助けを行っています。これは、書道を学術的な側面だけでなく、実生活に根ざした文化として広めたいという根本氏の姿勢を反映しています。

創作と国内外での発表

研究者、教育者としての顔を持つ一方で、根本氏は積極的に書家としての創作活動も行っています。自身の書表現を発表する場として、2016年には初めての個展を開催しました。これを皮切りに、その活動範囲は広がりを見せます。

2018年には、日本の高級腕時計ブランドであるGrandSeikoに作品を提供し、異分野とのコラボレーションを実現しました。そして2019年には、活動の場を海外にも広げ、アメリカ・ニューヨークにて個展「flow」を開催。国際的な舞台で自身の書を発表し、高い評価を得ました。

近年特に注目を集めた活動としては、2024年放送のNHK大河ドラマ『光る君へ』への参加が挙げられます。この作品では、番組の顔とも言える題字の揮毫（きごう）を担当したほか、劇中の書道指導も手掛けるなど、平安時代の書文化を描く上で重要な役割を果たしました。これにより、その名は広く一般にも知られるところとなりました。

メディアでの連載と著作

根本氏は、文字や書に関する知識・技術を伝えるため、メディアでの執筆活動も精力的に行っています。裏千家が発行する茶道雑誌、月刊『なごみ』では、2020年から「くずし字道場」と題した連載を担当しており、日本の古典籍に親しむ上で役立つ知識を提供しています。また、同時期からWeb上でも「ひとうたの茶席」という無料連載を展開し、気軽に書の文化に触れられる機会を提供しています。

これまでに複数の著書も出版しており、その内容は書道の技術習得から学術的な研究まで多岐にわたります。

『読むだけで「うまい」と言われる字が書ける本』（2014年、CCCメディアハウス）：実用的な美文字の書き方を指南する入門書。
『美文字の法則 さっと書く一枚の手紙 ―ボールペン・万年筆・毛筆』（2017年、さくら舎）：日常の手紙などに活かせる実践的な書き方を紹介。
『書の風流 近代藝術家の美学』（2021年、春陽堂書店）：近代日本の芸術家たちが書にどのように向き合ったかを探求する学術的な著作。
『平安かな書道入門 古筆の見方と学び方』（2023年、雄山閣）：専門分野である平安かな書道に関する入門書。

これらの著書を通じて、根本氏は幅広い読者層に書の世界への扉を開いています。

根本知氏は、書家、研究者、教育者という複数の顔を持ち、それぞれの立場で現代社会における書の役割や可能性を探求し続けています。その活動は、伝統的な書の世界と現代とを結びつけ、新たな価値を生み出すものとして注目されています。

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