根来上総

根来 上総

根来 上総（ねごろ かずさ、文化13年7月2日（1816年7月26日） - 明治25年（1892年）2月7日）は、江戸時代末期、幕末の長州藩における家老の一人。本名は親祐（ちかすけ）と称し、「上総」は通称として広く知られた。この他にも長五郎、帯刀、勢之祐といった通称を持っていた。根来家は代々長州藩に仕えた家柄であり、父・根来煕行は藩主毛利斉熙より、また上総自身とその子息である親保は藩主毛利慶親より偏諱（諱の一字）を賜るなど、藩主家との繋がりが深い家系であったことがうかがえる。

生い立ち

文化13年（1816年）7月2日、長州藩の上士階級である寄組に列する根来煕行の長男として生を受ける。根来家は1,036石の知行を持つ家柄であった。幼少期から武士としての教育を受け、藩の将来を担うべき人材として育てられたと考えられる。

藩政への関与

成長後、弘化4年（1847年）には藩の役職である大組頭に就任し、長州藩の藩政に関わるようになった。しかし、約7年後の嘉永7年（1854年）9月、病気を理由に一時的に職務を辞任し、藩の表舞台から遠ざかることとなる。

幕末の激動期

安政の大獄を経て、長州藩を含む日本全体が尊王攘夷や公武合体といった政治的な思想で揺れ動く激動期を迎える中、根来上総は文久元年（1861年）2月に再び公職に復帰した。翌文久2年（1862年）には江戸留守居役に任じられ、当時の藩論の中心であった公武合体論を推進していた長井雅楽の活動を支援する立場にあった。しかし、藩内で長井雅楽が失脚すると、その影響を受けて根来も重要な役職から外され、同年8月には藩主の世子である毛利元徳の近侍へと異動させられた。

文久3年（1863年）には、藩の命令により京都から長州への帰国を命じられ、一時期、蟄居あるいは謹慎に近い状況に置かれたが、間もなく政治の場に復帰を果たす。同年5月には長州藩の最高幹部である家老に抜擢され、藩政の中枢を担うこととなった。さらに7月には再び京都へ赴き、京都留守居役を務めていた宍戸真澂らと共に、朝廷との折衝や情報収集など、藩の外交・政治工作において重要な役割を担った。

第一次長州征伐後から明治維新へ

第一次長州征伐で藩が敗北し、恭順の姿勢を示す中で、藩内の権力構造は保守派へと傾いた。この状況下、高杉晋作ら尊王攘夷派の志士たちが藩政府に対して功山寺で武装蜂起した際、根来上総は彼らの勢力を受け入れ、恭順することで事態の収拾を図った。これ以降、根来は高杉ら変革を志向する勢力と歩調を合わせ、長州藩の藩政を主導する立場へと移行する。藩論が討幕へと大きく転換し、戊辰戦争へと進む中で、根来上総は藩の指導層の一員として、藩の軍事・政治体制の再構築や改革に尽力し、討幕運動の推進に貢献したと考えられている。

晩年

明治維新後、新たな時代を迎えても根来上総は引き続き要職を務め、明治3年（1870年）には山口藩（長州藩が改称）の大参事という要職に就任するなど、明治初期の藩政・県政において重要な役割を果たした。

明治17年（1884年）、高齢となった根来上総は、家督を子息である根来親保に譲り、隠居生活に入った。その後、明治25年（1892年）2月7日に77歳でその生涯を閉じた。法号は甘谷と称された。

根来上総は、幕末という激動期に長州藩の家老として藩政の中枢にあり、特に第一次長州征伐後の藩論転換期において、変革派との連携を通じて藩の方向性を定める上で重要な役割を果たした人物である。その生涯は、長州藩が近代国家建設に向けて変革を遂げていく過程と深く結びついている。

関連項目

* 根来氏

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