桂南天

桂 南天について

桂 南天（かつら なんてん）は、日本の伝統的な演芸の一つである上方落語において、特に名の知れた名跡の一つです。初代桂南天（1889年 - 1972年）は、上方落語の世界で特異な存在感を放つ落語家でした。その本名は竹中重春で、大阪市東区に生まれました。彼の家庭環境には芸人が多く、父親は仁輪加師の大和家小宝楽という人物で、これが彼の演芸人生の出発点となりました。

初めに、南天は父のもとで大和家小宝（やまとやこだから）として活動し、1903年頃には落語家の2代目桂南光（後に桂仁左衛門）の元で学びました。以降、彼は仁助、桂春堂、月亭名遊と名を変えながら、1919年から1920年頃に南天と名乗るようになりました。

1927年、彼は吉本興業を退社し、「落首記念」と題したお知らせをお世話になった方々に送付するなど、独立した活動を開始します。その後、5代目笑福亭松鶴が主催する「楽語荘」への参加を通して、さらに多くの人々に彼の芸を披露しました。彼の持ちネタは非常に多岐にわたり、特に小咄に関しては数えきれないほどの種類を覚えていました。そのため、南天は「諸芸十八般」と称されており、これは多才であることを示す洒落でもあります。

彼は落語だけでなく、紙切りや錦影絵、指影絵、滑稽手品、記憶術、軽口、寄席踊りや一人喜劇といった多様なジャンルでも活躍しました。落語が主な活動である一方、実は色物芸人としての出演が多かったのも特徴です。個人で演芸大会を開催するなど、自由な発想で芸の場を創出する姿勢がありました。

戦後の噺家不足の時期には、「口合按摩」や「さかさまの葬礼」といった演目を多く演じ、高座に立つ機会も増えました。録音されている音源には、1965年頃に収録された「口合按摩」があり、また映像作品としては読売テレビの「ずぼら」が一部残されています。

後輩の落語家である桂米朝は、南天に多くの影響を受け、彼の演技を学ぶことで上方芸能の貴重な部分を後の世に伝える役割を果たしました。特に南天が演じた錦影絵は、米朝一門により今でも受け継がれており、彼の芸は長年の間、多くの人に愛され続けています。彼の遺品や写真も米朝の家に多く残されており、その存在感が伺えます。

南天は多才であったものの、生活には恵まれないことが多かったとされていますが、彼はそれに不満を持つことなく、飄々とした生き方を貫き94年の生涯を全うしました。1969年には米朝の独演会に招かれる場面もあり、その際には今は亡き彼を「不審者」と思われたエピソードが残っています。彼の法要は、故人の特別な縁を持つ米朝が施主となり、大勢の著名な芸人が出席する中で行われました。法名は、「遊光院釋南天」と名づけられています。

桂南天の物語は、彼の多彩な才能と人間性、そして上方落語の伝統の重要な一部であることを改めて認識させるものです。このように、南天の存在は今でも多くの人々によって語り継がれています。

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