桂塩鯛

桂 塩鯛（かつら しおだい）

桂 塩鯛は、上方落語における名跡の一つであり、かつては「鹽鯛」と表記されていました。この名前は、初代桂文團治の俗称であり、彼が奥目であったことから名付けられたものです。彼の弟子たちの中にも「鯛」と名のつく者が多くおり、これはこの名跡の影響の現れと言えるでしょう。

名跡の由来と歴史

塩鯛という名の由来は単なるあだ名にとどまらず、落語の世界において重要な意味を持っています。困難な師弟関係や、落語家としての失敗が影響したのか、具体的に初代文團治の名跡を引き継いだ形で数代目が名乗る素地が揃っていなかったため、塩鯛という名跡は数年間にわたり代数が付けられずにいました。

初代文團治があだ名としてこの名を使い始めてから、実際に「鹽鯛」を正式に襲名したのは3代目桂 塩鯛です。3代目桂 塩鯛（本名: 岡本 蜜太郎）は、1877年に生まれ、1943年に亡くなるまで、上方落語界で精力的に活動しました。彼は1899年に初高座を果たし、それからのキャリアを通して数多くの芸名を変更しながら成長していきました。

3代目 桂 塩鯛の経歴

彼は若い頃から才能を発揮し、初めに笑福亭勝鶴の門下で修行を積みました。1904年、初代笑福亭福松のもとで次第に存在感を増していき、1911年頃には互楽派に転向し、様々な師匠のもとで修行を続けます。1913年には2代目桂米團治に弟子入りし、その後1919年に塩鯛を襲名しました。小柄で童顔だったため「ベビーハナシカ」とも称され、愛されるキャラクターとなりました。

多くの落語家が消えていく中、彼は老巧な芸風で昭和初期まで活躍し続けました。横綱や大関にはなれなかったものの、常に三役を保ち続け、地位を確立しました。時が経つとともに吉本興業を離れ、「雨風屋」という喫茶店を開店しつつ、主にお座敷やラジオで芸を披露するスタイルに変わりました。

演目や影響

彼の十八番としては『舟弁慶』『口入屋』『裏の裏』『袈裟茶屋』などが知られています。また米紫時代には『日和小町』『廻り猫』などのレコードも残しており、音源としても彼の芸風を楽しむことができます。

家庭については、福壽時代に妻の松川家妻奴がいて、三味線の名手として知られていました。夫の伴奏で有名になった彼女の後、戦後も「ひな」として活躍しました。彼には多くの弟子もおり、鯛蔵、鯛次、鯛六、鯛丈など、次世代にその名跡を引き継ぐ存在が育っています。

後年、4代目桂塩鯛を襲名した桂都丸の際に、研究家による調査で塩鯛の子孫が存在することが確認されるなど、ジャーナリズムの対象としても興味深い存在であり続けています。全体を通して、桂 塩鯛は単なる落語家としてではなく、文化的な背景や歴史に彩られた存在であることがわかります。

もう一度検索