桂文治 (初代)

初代桂文治の生涯と業績

初代桂文治（1773年 - 1815年）は、日本の落語界において重要な役割を果たした落語家です。本名は伊丹屋惣兵衛で、彼の息子である二代目桂文治も落語家として活動しました。文治が落語の道に入ったのは、江戸で「咄の会」が始まり、大坂での人気も高まりつつある頃とされており、彼は職業としての落語家のスタイルを確立した先駆者の一人とされています。

文治の出身地については諸説あり、京都や大阪の柴島（現在の大阪市東淀川区）、さらには大和葛城で生まれたとも言われています。彼が落語の活動を開始したのは、寛政6年（1794年）頃からとされ、当時は素人による座敷での素噺が流行していました。文治はこの背景の中で、より華やかで演出の豊かな芝居噺を生み出し、そのスタイルで人気を得ることに成功しました。

通常、プロの上方落語は京都の露乃五郎兵衛や、大坂の米沢彦八などが演じていましたが、文治は初めて常設寄席を開くことに成功し、坐摩神社の境内を借りて興行を行いました。この行動は、上方落語の発展に大きな影響を与え、彼が上方落語中興の祖と呼ばれる所以となりました。

文治の名作として現在でも語り継がれている噺には、『蛸芝居』、『昆布巻芝居』、『崇徳院』、『百人一首（千早振る）』や『滑稽清水（杢の市）』などがあります。また、『尽くしもの』や『女夫喧嘩』なども彼の得意な演目でした。彼は多くの弟子を持ち、特に桂文來、桂文東、桂磯勢、初代桂力造、初代桂文吾の5人は彼の高弟として名を馳せました。

1815年、文治は巡業先の四日市で亡くなります。享年は43歳とされ、法名は釋空海です。彼の墓所は三重県の仏性院にあります。文治が亡くなった後、2代目桂文治はその息子、文吉が継ぎました。文治の後を引き継いで名を守る者たちの中には、江戸で活躍した扇勇もおり、扇勇は三代目文治を名乗り、文治という名前は東西で広がりを見せました。

文治の本名である「惣兵衛」は、近年に二代目桂ざこばの弟子である桂そうばによって名跡として復活しました。これは彼の死後210年の時を経て、上方桂派の系譜が新たに名乗った形です。

落語の書籍化が盛んだった頃に文治も活動をしており、彼は『おかしいはなし』や『桂の花』、さらに『臍の宿かえ』などの著作を残しました。これらの刊行物は、落語の理解を深める上での貴重な資料となっています。特に、彼の作品は多くの人々に笑いを提供し、江戸期から続く日本の落語文化の発展に寄与しました。文治の落語はその後の落語家に多大な影響を与え、彼の業績は今もなお評価されています。

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