桂文紅 (4代目)

四代目 桂 文紅について

四代目桂文紅（よだいめ かつら ぶんこう）は、1932年4月19日に生まれ、2005年3月9日に亡くなった上方落語の名人です。彼の本名は奥村壽賀男で、出囃子は「お兼晒し」という楽曲が使用されました。

彼は大阪府立四条畷中学校を卒業後、大阪府立寝屋川高等学校に進学し、さらに立命館大学で学びながら、電線会社でアルバイトをしていました。その際、組合の文化祭で落語を披露し、あまりの見事さに素人コンクールで2位に輝きました。これにより、上方落語界に初めて大学を卒業した噺家としての地位を築くこととなりました。

1955年3月、四代目桂文團治に入門し、桂文光を名乗り同年8月に大阪松島福吉館で初舞台を果たしました。1959年2月に四代目桂文紅へと襲名し、その名で活動を開始します。1970年から1975年の間、三代目桂文我と共に「文文の会」を催し、上方落語の発展に寄与しました。彼は戦後の上方落語の復興期を支えた重要な人物の一人であり、他の「上方落語四天王」と並ぶ名手として名を馳せました。

桂文紅は弟子を取らず、孤高の存在として知られていましたが、その渋い芸風や独特のキャラクターで多くのファンを魅了しました。彼は背が高く、色黒の外見を持ち、自らを「エチオピアの煙突掃除」と称していたほどです。師匠である文團治の愛称「ゴジラ」に因み、入門当初は「アンギラス」とも呼ばれていました。

また、彼は得意なネタが多数あり、『鬼薊清吉』『島巡り』『胴取り』『初天神』『米揚げ笊』『ふたなり』『植木屋娘』などがその例です。文才にも恵まれ、ペンネーム「青井竿竹」でテレビやラジオの構成・脚本を手がけるとともに、上方落語の研究にも従事。その功績として『ぜんざい公社』や『テレビ葬式』といった作品の改作や新作を発表しました。

さらに、彼は余芸として紙切りが得意である他、顔のしわにタバコを挟むユニークな芸も持ち合わせていました。晩年には上方落語協会の理事を務め、特に笑福亭鶴瓶や笑福亭瓶太、笑福亭三喬といった後輩たちと共に活動し、交流を深めていきました。駆け出しの落語家である2代目桂ざこばとも深い関係を持ち、彼を「社長」と呼んで慕われていました。

桂文紅は飲酒ができない「下戸」で、かつては心のやるせなさから「自棄バナナ」を食べるというユーモラスなエピソードも残しています。この結果、腸捻転となり、彼の語り草となる出来事となりました。

彼は文團治の逝去時点で唯一の現役弟子であり、名の襲名に関しては周囲の勧めを拒否し、名を40年間も封印するという独自の道を歩んでいきました。 2005年、肝硬変により彼はこの世を去りました。これによって四代目文團治の直系は絶えましたが、今なお「紅寄席」という名前で追善の落語会が天満天神繁昌亭などで行われており、その影響は色あせていません。

近年では彼の著作も評価され、「若き飢エーテルの悩み」は桂文我が編集した作品として2009年に出版されました。彼の音源としては、2012年に発表された落語CD「落語 昭和の名人完結編」でも彼の活躍を聴くことができます。

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