桂米朝集成

『桂米朝集成』（全四巻）は、昭和を代表する落語家、三代目桂米朝による貴重な著作です。単なる落語の解説書にとどまらず、上方落語の伝統と魅力、そしてそれを支える文化、さらには米朝自身の芸道への歩み、師や友、弟子との交流といった多様な側面が、豊かに描かれています。

編集には豊田善敬氏、戸田学氏も携わり、岩波書店より2004年から2005年にかけて刊行されました。人間国宝の称号を持つ桂米朝は、上方落語の第一人者であると同時に、鋭い観察眼と深い知識を持つ上方文化研究家としても知られています。その専門性と経験が、この『桂米朝集成』に凝縮されていると言えるでしょう。

第1巻と第2巻は、上方落語の芸を多角的に論じた内容です。古典落語の解説にとどまらず、米朝自身の芸を通して上方落語の歴史や表現技法、そしてその背景にある上方文化を深く探求しています。単なる演目の紹介ではなく、上方落語の精神や奥深さを理解する上で重要な手がかりとなる資料が豊富に収録されています。

第3巻では、上方文化そのものへの考察が展開されています。落語という芸能を支える文化的な土壌を丁寧に分析することで、上方落語の独自性をより鮮やかに浮き彫りにしています。上方文化の多様な側面を多角的に捉えることで、落語という芸能の文化的意義をより深く理解できるよう構成されています。

そして第4巻は、桂米朝を取り巻く人々との交流を描いた、いわば人間桂米朝の物語です。師匠との出会い、友人との絆、そして弟子たちとの関係など、米朝の芸を育み支えてきた人々との交流を通して、人間としての深みと魅力が伝わってきます。座談会や対談、エッセイなども収録されており、親交の深さや、それぞれの個性、そして米朝の人間性に触れることができます。

この『桂米朝集成』は、単なる落語の解説書や伝記にとどまりません。上方落語、そしてより広く上方文化を理解するための包括的な資料であり、米朝という稀代の芸人、そして人間像を深く知るための貴重な一冊です。落語ファンはもちろんのこと、日本の伝統芸能や文化に関心のあるすべての人々にとって、必読の書と言えるでしょう。関連書籍として『桂米朝座談』や『桂米朝句集』なども存在し、より深く桂米朝の芸と人生を探求したい方にはおすすめです。

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