桂米朝座談

桂米朝座談：上方芸能への深い洞察と多彩な交流

『桂米朝座談』は、落語家としてだけでなく、上方演芸研究の第一人者としても知られた三代目桂米朝による、貴重な記録と考察を集めた書籍です。2005年から2006年にかけて岩波書店から刊行され、既に発表されていた『桂米朝集成』を補完する内容となっています。本書は、新たな資料の発掘や講演会、対談・座談会の記録などを加えることで、米朝の芸への探求心と、演芸界、そして文化界への幅広い交友関係を浮き彫りにしています。全2巻からなる本書は、単なる座談録を超え、上方芸能史を紐解く重要な資料ともなっています。

第1巻では、米朝の師匠である正岡容をはじめ、四代目桂米團治、小沢昭一、桂文枝といった演芸界の重鎮との対談・座談が中心となっています。それぞれの個性あふれる語り口を通して、米朝自身の芸への姿勢や、上方落語の歴史、そして時代背景が浮かび上がってきます。「戦中・戦後東京講談見聞記」や桂米團治の遺稿「凡想録」なども収録され、当時の演芸界の状況を知る上で貴重な資料となっています。これらの対談や記録は、単なる逸話にとどまらず、それぞれの演者の人となりや芸への情熱を深く理解する上で、重要な手がかりとなるでしょう。

第2巻では、小松左京、茂山千之丞、柳家小さんといった異分野の著名人との対談が収録されています。落語という枠を超えた視点から、米朝の芸や上方芸能について多角的な考察がなされています。さらに、大西信行によるインタビューでは、米朝の創作活動について、自身の言葉で語られています。自身の芸に対する深い洞察と、常に新しい表現を探求する姿勢が、このインタビューを通して明らかになります。巻末には自主公演記録が収録されており、米朝の舞台活動の歴史を垣間見ることができます。

『桂米朝座談』は、単なる座談集という枠を超え、上方芸能、ひいては日本の伝統芸能の理解を深めるための、重要な資料と言えるでしょう。米朝という稀代の芸人・研究者の多様な側面に触れられると共に、日本の伝統芸能の奥深さを改めて実感できる一冊です。演芸史研究者にとって必携の書であると同時に、落語ファンにとっても、新たな発見と感動を与えてくれるでしょう。本書を通じて、桂米朝の芸への情熱と、その時代背景を理解することで、上方芸能への理解がより一層深まることでしょう。また、収録されている多様な視点からの考察は、現代の芸能表現を考える上でも示唆に富んでいると言えるでしょう。

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