桂葉清水

宮城県栗原市の名水百選「桂葉清水」：歴史と文化が息づく湧水

宮城県栗原市高清水地区に位置する桂葉清水は、1985年に名水百選に選定された、由緒ある湧水です。地元の人々からは「かつらっぱ」と親しみを込めて呼ばれており、古くから地域に根付いた生活用水として大切に守られてきました。

この清水は、大木の桂の根元から湧き出ています。清冽な水は、周辺の豊かな自然環境と深く結びつき、その透明度と冷たさは、訪れる人々を癒やす力を持っています。現在も湧き続けているこの清水は、地元住民にとってかけがえのない存在であり、地域のシンボルとして愛され続けています。

高清水地区は、古くから「高泉」と呼ばれていました。その名の通り、一級河川である北上川水系小山田川の丘陵地帯には、数多くの清水が湧き出ており、「高清水の七清水」として知られていました。桂葉清水はその一つであり、他の六つの清水と共に、地域の人々の生活を支えてきました。

しかし、時代の流れとともに、周辺地域の開発が進み、七つの清水のうちいくつかは、湧出量が減少したり、完全に枯渇したりしてしまいました。桂葉清水も例外ではなく、近年は湧出量が減少し、飲用する際には煮沸が必要となっています。それでもなお、その存在感は失われておらず、人々の記憶と郷愁を呼び覚ます、重要な場所として残っています。

高清水出身の歌人、中村徳重郎氏は、故郷の高清水を愛し、その自然や文化を数々の歌に詠み込みました。彼の作品の中には、高清水の七清水を題材にしたものも多く、これらの歌は、失われつつある歴史や文化を後世に伝える貴重な資料となっています。

高清水の七清水は、それぞれに歴史と物語を持っています。例えば、清水権現清水は、かつて旧志波姫神社の境内にあったとされ、「高清水」という地名の由来となったという説もあります。現在では枯渇していますが、その歴史を示す石碑が残されています。他の清水も、かつては参拝客や旅人の休憩場所として利用されていたり、近隣住民の飲料水として使われていたりと、人々の生活に密着した存在でした。

これらの清水の多くは、現在では石碑やわずかな痕跡が残るのみとなっていますが、高清水の歴史と文化を語る上で、無視できない重要な存在です。桂葉清水は、その中でも現在も湧き続けている貴重な清水であり、これからも地域の人々によって大切に守られていくことでしょう。

東北新幹線くりこま高原駅から宮城県道1号古川佐沼線を通りアクセスできます。名水百選に選ばれた桂葉清水は、自然の恵みと歴史を感じることができる、貴重な場所です。訪れた際には、その歴史に思いを馳せながら、清らかな水を味わってみてください。

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