桃山晴衣

桃山晴衣：伝統と革新を紡いだ三味線シンガーソングライター

桃山晴衣（ももやま はるえ、1939年6月22日 - 2008年12月5日）は、三味線音楽家としての伝統的な素養を深く持ちながらも、既存の枠にとらわれず、新たな音楽表現を追求したシンガーソングライターです。本名を鹿島晴江といい、東京で生まれました。

伝統音楽からの出発と革新への挑戦

6歳から三味線を始めた桃山は、伝統的な古曲宮薗節を習得します。しかし、彼女は伝統の継承に留まることなく、家元制度に縛られた邦楽の世界から一歩踏み出し、自らの歌と、歌が生まれる状況そのものを創造することに情熱を注ぎました。その活動は、単なる古典の演奏に留まらず、日本の音楽文化全体に対する問いかけでもありました。

『梁塵秘抄』の蘇生と日本の音の探求

桃山のライフワークとして特筆されるのは、平安時代末期の歌謡集『梁塵秘抄』の蘇生です。埋もれていた日本の古謡に光を当て、三味線の弾き語りによって現代に蘇らせるという試みは、彼女の音楽家としての才能と情熱を象徴しています。彼女は『梁塵秘抄』を通して、日本の音、日本の音楽の根源を追求し続けました。

多彩な活動と新たな試み

桃山の活動は多岐にわたりました。1960年には、芸と文化を考える「於晴会」を結成し、機関誌「桃之夭夭」を発行。1961年には、父親である鹿島大治の支援のもと桃山流を創立し家元となりました。その後、古曲宮園節に入門し、人間国宝である四世宮園千寿に師事するなど、伝統音楽の研鑽にも励みました。

しかし、彼女は伝統に安住することなく、各地のわらべうたや子守唄、古謡の調査、添田知道に師事しての明治・大正演歌の研究など、新たな分野にも積極的に挑戦しました。落語とのコラボレーションや現代小説の語りなど、邦楽の可能性を広げる実験的な試みも数多く行っています。

土取利行との出会いと「立光学舎」

1981年、桃山は『梁塵秘抄』の弾き語り全国ツアーを敢行。翌年にはパリでコンサートを開催し、パーカッショニストの土取利行と出会います。この出会いは、彼女の音楽活動に大きな影響を与えました。1987年には、土取とともに「立光学舎」を設立し、「立光学舎フェスティバル」を10年間開催。音楽を通じた文化交流や地域振興にも貢献しました。

バンドMOMO結成と晩年の活動

1992年には、石川鷹彦（ギター）、菊地雅志（尺八）、古田りんず（シンセサイザー）とバンドMOMOを結成し、新たな音楽性を追求。1997年には、古代末期から中世の女性芸能史を題材にした「今様浄瑠璃」三部作を発表するなど、晩年まで創作意欲は衰えることがありませんでした。

2008年、胸部腫瘍のため69歳で逝去。しかし、彼女の音楽と精神は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

ディスコグラフィーと著作

桃山晴衣は、数多くのアルバムや著作を残しています。代表的な作品としては、アルバム『遊びをせんとや生まれけん 梁塵秘抄の世界』や、著書『梁塵秘抄 うたの旅』などが挙げられます。これらの作品を通して、彼女の音楽と思想に触れることができます。

参考文献

岡本文弥『芸渡世』（新装改訂版）三月書房、1962年。ISBN 4-7826-0151-4。

外部リンク

桃山晴衣のうた語り - ウェイバックマシン
CD:遊びをせんとや生まれけん--「梁塵秘抄」の世界 - じゃぽ音っと作品情報
桃山晴衣の音の足跡（1）-（40） - 土取利行・音楽略記（はてなブログ）

桃山晴衣は、日本の伝統音楽を深く理解し、それを現代に生かすことによって、独自の音楽世界を築き上げました。彼女の音楽は、時代を超えて人々の心に響き、日本の音楽文化の豊かさを伝えてくれるでしょう。

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