桐谷洗鱗

桐谷洗鱗の生涯と業績

桐谷洗鱗（きりや せんりん、1877年9月1日 ‐ 1932年7月19日）は、日本の画家であり、特に仏画の分野で著名な存在です。彼は明治時代に口絵画家としてのキャリアをスタートさせ、その後、大正から昭和にかけて多岐にわたる美術活動を展開しました。洗鱗の本名は長之助であり、新潟県三島郡宮本町（現在の長岡市）で生まれました。

学びの道

桐谷洗鱗は富岡永洗と橋本雅邦の門下生として、古典技術や美術の基礎を学びました。彼は20歳で上京し、永洗に師事しました。永洗の急逝を惜しむ記事を執筆したこともあり、深い愛情を持っていました。翌に雅邦に師事し、東京美術学校の日本画家選科を卒業後、1907年には文展に入選しました。初期には、京都や奈良の寺院を巡った旅行が彼の作風に影響を与え、1909年には「訪古画帖」を制作し、仏教画へと進んでいきます。

海外での足跡

1911年には古代インド美術を研究するためインドに渡り、著名な文化人であるタゴールと交流しました。彼はまた、岡倉天心とも面会し、インドの美術や思想に強い影響を受けます。帰国後も、再び1917年にインドへ旅し、アジャンターの壁画を模写してその技法を学びました。

震災後の活動と木版画

関東大震災後の1924年、大正13年には、伝統的な木版画技法を基にした『大正震災木版画集』（36図）を艶画報社から発表しました。このプロジェクトには、他の多くの作家も参加しており、震災の影響を受けた日本の風景や人々の様子が描かれました。

晩年の作品

1930年には楽山荘の壁画21面を手掛けるなど、仏画の権威としての地位を確立します。同年、彼はワルシャワでの日本宗教芸術展に100点以上の作品を出品し、1931年には国賓待遇を受けるなど、国際的にも評価されるようになります。

突然の死

1932年、洗鱗はインドでの仏教復興を目指して活動していたダルマ・パーラから、仏教聖地サールナート（鹿野園）での寺院建立に合わせて釈尊一代記を描く依頼を受けました。しかし、渡印直前に病を患い急逝してしまいました。この役割は彼の学生時代からの友人である野生司香雪が引き継ぐこととなりました。

代表的な作品

桐谷洗鱗の作品には多くの口絵や挿絵があります。特に印象的なのは、「般若心中」や「大石良雄」の口絵です。また、文献として「世界のお伽噺57 指環の魔力」でも彼の挿絵が収録されています。これらの作品は、彼が日本の伝統美術をいかに深く理解し、かつ新しい形で表現したかを物語っています。

彼の短い生涯は多くの挑戦と成就に満ちており、現代においても彼の業績は評価されています。桐谷洗鱗の生涯を通じて、彼の深い作品世界に触れることができ、多くの人々に影響を与え続けています。

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