桑原広考

桑原 広考

1978年、埼玉県熊谷市に生まれた日本の映画製作者である。

映画制作への道

東京ビジュアルアーツでの学びを経て、日本大学文理学部へと進学。大学在学中から自身での映画制作を開始した。同大学で開かれていた映画監督・井土紀州の講義を非公式に聴講したことが、その後のキャリアの大きな転機となる。この出会いをきっかけに、2004年には井土監督の作品である『ラザロ-LAZARUS-』の「複製の廃墟」篇に制作スタッフとして参加。井土監督やプロデューサーの吉岡文平氏から薫陶を受け、映画製作集団スピリチュアル・ムービーズのメンバーとして活動を共にするようになった。

team JUDAS結成と『へばの』

2005年、『ラザロ-LAZARUS-』の別パートである「朝日のあたる家」篇の撮影現場で、後に盟友となる木村文洋監督と出会う。この縁から、2007年には木村監督、そしてスピリチュアル・ムービーズの初期メンバーであった高橋和博氏らと共に映画制作チーム「team JUDAS」を結成する。このチームの立ち上げは、企画・製作・仕上げ・そして劇場公開に至るまで、映画制作の全工程を一貫して自身たちで手掛けるという、独立プロダクションとしての活動を本格化させる契機となった。最初に手掛けた作品は、木村文洋監督の長編映画『へばの』（2008年公開）である。この作品は、第32回カイロ国際映画祭のデジタル長編部門で銀賞を受賞したほか、第38回ロッテルダム国際映画祭など国内外の多数の映画祭で正式に出品され、高い評価を獲得した。日本では2009年1月31日からポレポレ東中野でレイトショー公開されている。

岡山での活動と『ひかりのおと』

2008年には、team JUDASの『へばの』が、第4回岡山映像祭で山崎樹一郎監督の『紅葉』と共に上映された。この共演がきっかけとなり、岡山県真庭市を舞台にした新たな映画製作企画が立ち上がる。この企画は、地域との連携を深めながら、およそ2年半の歳月を費やして映画『ひかりのおと』（山崎樹一郎監督）として結実する。完成後、この作品は従来の劇場公開とは異なる、ユニークな方法で観客に届けられた。2011年10月から2012年3月にかけて、岡山県内の全域51会場、計100スクリーンで巡回上映が敢行されたのである。桑原氏は全ての上映会場に足を運び、観客や地域の人々と直接触れ合う機会を設けた。この積極的な活動は、単なる映画上映に留まらない文化的な取り組みとして高く評価され、第13回岡山芸術文化賞グランプリを受賞する快挙を成し遂げた。さらに、この作品は第24回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門や第41回ロッテルダム国際映画祭などに正式出品されたほか、第12回ニッポン・コネクションにてNIPPON VISIONS Awardを受賞するなど、国内外で注目を集めた。

その他の主な製作参加作品

桑原氏はプロデューサーを中心に、様々な作品に関わっている。

『つづきのヴォイス -山中一揆から現在-』（2012年、山崎樹一郎監督） - プロデューサー、録音、編集
『キスして。』（2013年、ほたる監督） - 編集
『新しき民』（2014年、山崎樹一郎監督） - プロデューサー
『息衝く』（2018年、木村文洋監督） - 脚本、プロデューサー

まとめ

桑原広考は、自主的な映画制作からキャリアをスタートさせ、共同制作チームを結成し、国内外で評価される作品をプロデュースする一方で、地域に深く根差したユニークな上映活動を展開するなど、既存の枠にとらわれない多様なスタイルで映画製作に取り組む人物である。その活動は、映画作品の製作だけでなく、観客への届け方や地域社会との関係性構築といった点においても、日本のインディペンデント映画界における重要な一例として位置づけられるだろう。

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