井土紀州

井土紀州(いづち きしゅう)は、1968年三重県に生まれた日本の映画監督脚本家です。

経歴



松阪高校、法政大学文学部を卒業。大学在学中から映画上映団体「シアター・ゼロ」に所属し、映画上映の企画運営に携わりました。大学卒業後は、アテネ・フランセ文化センターで映写技師として勤務する傍ら、キュレーターの安井豊に師事し、企画運営にも参加しました。1993年には、新進気鋭の映画監督を紹介する企画「新・日本作家主義列伝」で、ピンク四天王や河瀬直美らの紹介に尽力しました。

映画監督として



1992年、法政大学在学中に、高校時代の友人である吉岡文平と共同で制作した『第一アパート』が東京学生映画祭で崔洋一に絶賛され、特別賞を受賞しました。1997年に監督デビュー作となる『百年の絶唱』を発表。東京国際映画祭で上映された後、1998年に渋谷ユーロスペースでレイトロードショー公開され、8日間という短期間の上映にもかかわらず、約1,000人の観客を動員し、その後全国各地、海外でも上映されました。この作品の制作中に、吉岡文平らと映画製作集団「スピリチュアル・ムービーズ」を立ち上げました。2005年には、ドキュメンタリー映画『レフト・アローン』を公開し、日本の戦後左翼史を検証しました。2007年には、格差社会を描いた『ラザロ-LAZARUS-』三部作を発表。社会に対する痛烈な問題提起と娯楽性が共存した作風で大きな反響を呼び、ロッテルダム映画祭でも上映されました。2009年には、『行旅死亡人』がモントリオール映画祭で上映され、2011年には、『土竜の祭』と『泥の惑星』がフランクフルトの映画祭「ニッポンコネクション」で上映されるなど、海外でも高い評価を得ています。2010年には、「映画一揆」と題した特集上映が渋谷ユーロスペースをはじめ、各都市で開催されました。2012年には、佐藤正午原作の『彼女について知ることのすべて』を監督しています。

脚本家として



1994年、瀬々敬久との出会いをきっかけに、ピンク映画の脚本を書き始めました。犯罪と性をモチーフにした骨太な作風が特徴で、瀬々敬久の初期の代表作『黒い下着の女 雷魚』や、千原浩史・小島聖主演の『HYSTERIC』、木村祐一監督の『ニセ札』など、実際の事件や犯罪を題材にした作品を多数執筆しています。その他にも、GacktHYDEが主演した『MOON CHILD』、矢崎仁司監督の『不倫純愛』、瀬々敬久監督の『64(ロクヨン)』、菅田将暉小松菜奈主演、山戸結希監督の『溺れるナイフ』など、幅広いジャンルの作品を手がけています。『私立探偵・濱マイク』シリーズ、『ダムド・ファイル』シリーズ、ドキュメンタリー番組『激動! 世紀の大事件 オウム真理教と闘った家族の全記録〜地下鉄サリン事件20年〜』、ジェーン・スー原作の『生きるとか死ぬとか父親とか』など、テレビドラマの脚本も担当しています。

人物



「井土紀州」は本名であり、特徴的な名前から「文藝」の対談で、柄谷行人から本名かどうかを何度も確認されたというエピソードを語っています。また、「井上紀州」と誤記されることが多いようです。

主な監督・脚本作品



監督作品

第一アパート(1992年、共同監督:吉岡文平)
百年の絶唱(1998年)
ヴェンダースの友人(2000年)
LEFT ALONE(2005年)
ラザロ-LAZARUS-(2007年)
人に歴史あり~十八歳の暗黒(2008年)
行旅死亡人(2009年)
犀の角(2009年)
土竜の祭(2009年)
泥の惑星(2009年)
青春Hシリーズ
ピラニア(2010年)
ふたりのシーズン(2012年
マリア狂騒曲(2013年)
彼女について知ることのすべて(2012年
漂着物(2017年)
卍(2023年)

脚本作品

高級ソープテクニック4 悶絶秘戯(1994年)
終わらないセックス(1995年)
赫い情事(1996年)
牝臭 とろける花芯(1996年)
禁じられた情事 不倫妻大股びらき(1996年)
黒い下着の女 雷魚(1997年、監督:瀬々敬久
人妻・青年狩り(1997年)
KOKKURI こっくりさん(1997年)
悶絶大回転 ひと晩に何回でも(1997年)
熟女ソープ 突きぬけ発射(1998年、監督:榎本敏郎)
THE FETIST 熱い吐息(1998年)
汚れた女(マリア)(1998年)
魔弾!檻の中の美術教師(1998年)
覗かれた不倫妻 主人の目の前で…(1999年)
喪服姉妹 タップリ濡らして(1999年)
HYSTERIC(2000年)
濡れ濡れ 卍妻 喪服で昇天(2000年)
おしゃぶり天使 白衣のマスコット(2000年)
RUSH!(2001年
ラブホテル 初めての体験(2001年
ラブホテル あぶない関係(2001年
極妻任侠道 夜叉絶叫(2002年)
私立探偵 濱マイク(2002年、日本テレビ)
MOON CHILD(2003年)
YUMENO ユメノ(2005年、監督:鎌田義孝)
屋根裏の散歩者(2006年)
刺青 堕ちた女郎蜘蛛(2006年)
密戯 ひとには言えない…(2007年)
ニセ札(2009年、監督:木村祐一、脚本:向井康介と共同)
禁断の果実 義息子との夜(2009年)
運命のひと(2009年)
白日夢(2009年)
不倫純愛(2010年)
ワラライフ!!(2011年、監督:木村祐一木村祐一と共同)
激動! 世紀の大事件 オウム真理教と闘った家族の全記録 〜地下鉄サリン事件20年〜(2015年、フジテレビ)
64(ロクヨン)(2016年、監督:瀬々敬久、脚本協力)
溺れるナイフ(2016年、監督:山戸結希
生きるとか死ぬとか父親とか(2021年、監督:山戸結希、菊地健雄、テレビ東京)
遠くへ、もっと遠くへ(2022年、監督:いまおかしんじ)

出演

路地へ 中上健次の残したフィルム(2000年)
大島渚の帰る家(NHK、2013年、田村孟役)
おとぎ話みたい』(2013年、監督:山戸結希、杉本役)


外部リンク



スピリチュアル・ムービーズ
井土紀州 (@eigagumin) - X(旧Twitter)
一般社団法人シナリオ作家協会 シナリオ作家リレー日記 井土紀州
井土紀州 - allcinema
井土紀州 - KINENOTE
井土紀州 - 日本映画データベース
Kishû Izuchi - IMDb(英語)

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