桜ノ雨

『桜ノ雨』の多角的展開：楽曲、小説、映画

『桜ノ雨』（さくらノあめ）は、2008年2月にhalyosy（森晴義）がニコニコ動画で発表した楽曲です。卒業をテーマにした感動的な歌詞とメロディーが多くの人の心を捉え、ネットを中心に大きな人気を博しました。この楽曲は、後に森が所属するユニットabsorbのメジャーデビューシングルとなり、様々なメディアへと展開されていきました。

楽曲「桜ノ雨」

誕生秘話と制作背景

「桜ノ雨」は、ニコニコ動画で話題となったsupercellの「メルト」に影響を受けた森が、初音ミクに歌わせたいと考えたことから生まれました。初音ミクの公式プロフィールにある16歳という年齢設定から、高校生活を送る彼女の姿を想像し、卒業シーズンをテーマにした楽曲を制作しました。

作詞は森がabsorbのメンバーである中村博、笹原翔太と共同で行い、作曲・アレンジは森と中村が担当しました。森自身は高校を中退した経験から、卒業への憧れや青春への想いをこの曲に投影したといいます。あえて美しい思い出だけを描くことで、学生にはそうした思い出を作ってほしい、大人には青春時代を思い出してほしいという願いが込められています。

インターネットでの広がりと桜ノ雨プロジェクト

楽曲が発表されると、多くのファンが関連動画を投稿し、ネット上で「桜ノ雨」は大きなムーブメントとなりました。その人気を受けて、absorbのメンバーとネットを通じて知り合った人々が協力し、「桜ノ雨プロジェクト」が発足。ファンによる合唱企画や、多くの学校から卒業式で歌いたいというオファーが殺到し、公式サイト内に「桜ノ雨学園」という特設ページが作られました。

2008年12月には、absorbは「桜ノ雨」でメジャーデビュー。2009年には、プロジェクト主催のイベント「桜ノ雨学園卒業式」が開催され、多くのファンを魅了しました。

楽曲のメッセージ

当初は初音ミクをイメージして作られた曲でしたが、森はライブで歌ううちに、「桜ノ雨」がabsorbのメッセージであり、聴く人全てのメッセージでもあると気づいたといいます。この曲が長く歌い継がれていくことを願っていると語っています。

2009年には、音楽情報サイトBARKSのアンケートで「卒業式で歌ってほしいアーティスト」の3位にランクイン。多くの学校で卒業式で合唱されるなど、卒業ソングとしての地位を確立しました。

シングル収録曲

1. 桜ノ雨 -standard edit-
2. 桜ノ雨
3. 桜ノ雨 -less vocal-
4. 桜ノ雨 -合唱ピアノ伴奏-
5. 桜ノ雨 absorb feat.初音ミク -standard edit-
6. 桜ノ雨 absorb feat.初音ミク
7. 桜ノ雨 absorb feat.初音ミク -less vocal-

演奏メンバー

absorb: サウンドプロデュース、アレンジ、ボーカル、ギターレコーディング
笹原翔太 (that): ボーカル
森晴義 (halyosy): ボーカル, ピアノ
中村博: アコースティックギター, エレキギター
西込加久見: エレキベース, 楽器レコーディング, ミキシング
國分教貴: ドラムス
加藤直子: 1stヴァイオリン
田島華乃: 2ndヴァイオリン
加藤朋子: ヴィオラ
田中愛: チェロ
立山秋航: ストリングスアレンジ

初音ミクバージョン

初音ミク: ボーカル
absorb: サウンドプロデュース, アレンジ, レコーディング, ミキシング
森晴義 (halyosy): ピアノ
中村博: アコースティックギター, エレキギター, 全楽器プログラミング
西込加久見: 追加ミキシング

小説版「桜ノ雨」

シリーズ概要

2012年から2015年にかけて、森の原案を基に、複数の作家によって小説版が発表されました。小説では、初音ミクをはじめとするVOCALOIDキャラクターたちが高校生として登場し、青春を謳歌する姿が描かれています。

登場人物と物語

小説版では、音浜高校の合唱部を舞台に、新入部員から卒業までの1年間を、春・夏・秋・冬それぞれの季節で主人公を変えながら描かれています。

『桜ノ雨』：鈴（リン）を主人公に、入学から音楽祭までの物語が描かれる。
『桜ノ雨 僕らが巡り逢えた奇跡』：未来（ミク）を主人公に、合唱部部長としての視点から描かれる。
『Fire◎Flower 十人十色に輝いた日々』：蓮（レン）を主人公に、子供時代から卒業後のエピソードが描かれる。
『桜ノ雨 僕らはここで逢おう』：未来（ミク）が音楽教師として赴任した学校での物語が描かれる。
『Fire◎Flower 君を好きでいられて良かった』：蓮（レン）を主人公に、帰国後の物語が描かれる。

各巻では、「桜ノ雨」が合唱部で歌われる卒業ソングとして重要な役割を果たし、ネットで人気になっているという設定も盛り込まれています。

主な登場人物

鈴（リン）: モデルは鏡音リン。1年生時は主人公。
蓮（レン）: モデルは鏡音レン。鈴の幼馴染。後に海外でボランティア。
未来（ミク）: モデルは初音ミク。合唱部部長となり、後に音楽教師に。
瑠華（ルカ）: モデルは巡音ルカ。合唱部副部長。
ハル: 合唱部部長。「桜ノ雨」の作者という設定。モデルは森晴義の理想像。
勇馬（ロロ）: モデルは66（ロロ）。引きこもり気味の男子生徒。
理真（リマ）: モデルはPrima。音浜高校の2年生で合唱部部長。
響（キョウ): モデルはZOLA PROJECT KYO。合唱部の幽霊部員。
由有（ユウ): モデルはZOLA PROJECT YUU。響の幼馴染。
芽依子（メイコ）先生: モデルはMEIKO。合唱部の顧問。
海斗（カイト）先生: モデルはKAITO。合唱部の副顧問。調理部顧問。

単行本情報

1. 『桜ノ雨』（2012年2月20日、PHP研究所）
2. 『桜ノ雨 僕らが巡り逢えた奇跡』（2013年3月15日、PHP研究所）
3. 『Fire◎Flower 十人十色に輝いた日々』（2013年8月28日、PHP研究所）
4. 『桜ノ雨 僕らはここで逢おう』（2014年3月24日、PHP研究所）
5. 『Fire◎Flower 君を好きでいられて良かった』（2015年3月7日、PHP研究所）

映画版「桜ノ雨」

概要

2016年には、ウエダアツシ監督によって実写映画化されました。山本舞香が主演を務め、小説版をベースにしたオリジナルストーリーが展開されています。映画では、静岡県沼津市の音浜高校を舞台に、未来（山本舞香）が合唱部に入部し、仲間と共に成長していく姿を描いています。

あらすじ

内気な女子高生の遠野未来（山本舞香）は、桜音ハル（浅香航大）のピアノに惹かれ合唱部に入部します。しかし、自信が持てないまま1年が過ぎ、新入部員の佐山鈴（井上由貴）と北村蓮（広田亮平）が入部してきます。顧問の引退、部内の不協和音、部員同士の恋愛感情などが絡み合いながら、最後のコンクールに向けて部員たちが成長していく姿が描かれています。

キャスト

遠野未来: 山本舞香
桜音ハル: 浅香航大
北村蓮: 広田亮平
美月瑠華: 久松郁実
鹿島友梨: 三浦透子
佐山鈴: 井上由貴
高田芽衣子: 田畑智子

スタッフ

監督: ウエダアツシ
脚本: 小林弘利
音楽制作・原作・原案: halyosy
* 製作総指揮: 吉田尚剛

関連商品

DVDビデオが2016年9月9日に発売されました。

まとめ

「桜ノ雨」は、楽曲から始まり、小説、映画へと展開した人気のコンテンツです。卒業という普遍的なテーマを軸に、それぞれのメディアで独自のストーリーやキャラクターが展開され、多くのファンを魅了し続けています。各作品を通して、青春時代の輝きや友情、成長といった普遍的なテーマが描かれており、世代を超えて共感を呼んでいます。

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