桜井戸

桜井戸：山口の銘水、歴史と伝説を湛える名水百選

山口県岩国市通津地区にひっそりと佇む桜井戸は、昭和60年（1985年）に環境省の名水百選に選定された、由緒ある名水です。澄んだ水は、現在も地域住民の飲料水や、田畑を潤す灌漑用水として利用されているほか、地元で開催されるお茶会などにも使用され、人々の生活に深く根付いています。

桜井戸の歴史は古く、瀬戸内海を行き交う船舶の貴重な飲料水源として利用されていた時代もありました。地元の人々の間では、この水を飲むと長寿に恵まれるという伝説が語り継がれ、古くから人々の健康を支えてきたことが伺えます。

特に興味深いのは、江戸時代の人物との関わりです。吉川広家公は隠居生活を送っていた頃、桜井戸の水を京都御所の用水「柳の水」と比較し、その品質に遜色ないと高く評価したと伝えられています。この逸話は、桜井戸の優れた水質を裏付けるものと言えるでしょう。

さらに、吉川広家公に招かれた茶人で、浅野家家老であった上田宗箇は、桜井戸の水の風味を気に入り、この近郊で開催される茶会に好んで使用したと言われています。上田宗箇は茶道界において著名な人物であり、彼によって桜井戸の水が茶の湯の世界へと広まったという歴史的背景も持っています。

桜井戸へのアクセスは非常に良好です。JR山陽本線通津駅から徒歩約5分と、公共交通機関を利用して容易に訪れることができます。周辺には、のどかな田園風景が広がり、静寂な環境の中で名水の恵みを味わうことができます。

名水百選に選ばれた桜井戸は、単なる井戸ではなく、人々の生活、歴史、文化が凝縮された、いわば「生きた歴史」と言えるでしょう。澄んだ水と豊かな自然に囲まれた桜井戸を訪れ、その歴史と伝説に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。その神秘的な雰囲気と、清冽な水は、きっと訪れた者に深い感動を与えてくれるはずです。 山口観光の際には、ぜひ訪れてみたいスポットの一つと言えるでしょう。

もう一度検索