桜川 (能)

『桜川』について

能楽の曲『桜川』は、世阿弥によって作られた作品で、日本の伝統文化の一端を担っています。この作品の舞台は、日向国桜の馬場（現在の宮崎県西都市）と常陸国桜川（現在の茨城県桜川市）で、1438年（永享10年）に関係する人物たちの物語が展開されます。

物語は、岩瀬の櫻川磯部稲村神社の宮司である磯部祐行が、当時の将軍・足利義教に花見の物語『桜児物語』を捧げたことから始まります。この物語は、平将門の子、桜子の若が主役として描かれており、母と息子の愛情がテーマとなっています。文献によると、『桜川』は、将軍義教の命により世阿弥が作成したとされています。

あらすじ

物語の主な舞台である九州日向国に住む桜児は、家計が厳しく、お抱えの人商人に自らを売ることを決意します。彼は人商人に、自分の幼い頃の手紙を母親に渡してほしいと頼んで、母との別れを選びました。母はその手紙を読んで息子の悲しい境遇を知ると、彼の決意に驚き、氏神に祈りを捧げます。その後、母は桜児の行方を追って旅を始めることになります。

3年が経過し、常陸国の桜川では桜が満開の季節を迎えます。桜児はこの間に磯辺寺で修行に励んでおり、今日も師僧と共に桜川の名所へと出かけます。そこでは、地元の人々が狂女の噂をし、彼女が過去に桜児を捜し求めて東国へ来たことがわかります。狂女は、自身の子供と桜児の名が同じであることを明かし、その思い出に涙を流します。この瞬間、僧は彼女が桜児の母であると気づき、母子の再会を成し遂げます。

物語の重要性

『桜川』は、母と子の絆を描いた深い感動を呼ぶ物語であり、再会の喜びが印象的な場面として表現されています。その背後には、花の文化や桜に対する日本人の特別な思いが含まれており、見る者に深い感慨を与える作品となっています。

また、この作品は室町時代の文化や風俗を知る貴重な資料でもあり、能楽の歴史にも位置付けられています。物語が描かれる舞台として選ばれた桜川や磯部稲村神社は、現在でも訪れる人々に愛され続けている場所です。このような歴史的背景や文化的価値を秘めた『桜川』は、これからも日本の伝統芸能において重要な位置を占めることでしょう。

関連地点

• - 西都市
• - 桜川市
• - 桜川のサクラ
• - 磯部稲村神社

『桜川』は、その背後にある物語を知ることで、一層深い感動をもたらす一品であるといえます。

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