桜沢如一

櫻澤如一：マクロビオティックの Pioneer

櫻澤如一（1893年 - 1966年）は、思想家、マクロビオティック（食養）の提唱者として知られ、海外ではジョージ・オーサワの名で親しまれました。彼は、食養を日本のみならず、北米、中南米、欧州、インド、アフリカ、ベトナムなど世界各地に広め、その普及に生涯を捧げました。

生涯

京都市東山区で生まれた櫻澤は、幼少期から病弱であり、誌歌に親しむ日々を送りました。苦学の末に商業高校、仏語学校を卒業後、貿易商として身を立てますが、石塚左玄の食養に出会い、健康を回復。この経験が、彼の人生を大きく変えるきっかけとなりました。貿易事業と並行して、大和言葉の復興運動の一環として、シャルル・ボードレールの『悪の華』などの翻訳も行いました。

1924年、電子機器の貿易から手を引き、石塚左玄の食養会の活動に尽力し、多数の書籍を出版。その成果を試すため、パリへ無銭武者旅行に出発し、フランスでも著作活動を開始します。帰国後は反戦運動にも身を投じ、その隠れ蓑として健康指導や翻訳活動を行いました。1937年には食養会の会長に就任しますが、2年後に脱会。

1940年、滋賀県大津市に無双原理講究所を開設し、東洋思想と食養を融合させた独自の理論を展開。再び反戦活動に傾倒し、戦争中は軍部や右翼からの暴力を受けました。敗戦後、世界政府協会を設立し、世界連邦運動に取り組み、平和を追求。食による健康を思想の根本に据え、再び世界各地を旅し、マクロビオティックの普及に努めました。

日本での活動は、真生活協同組合（1945年設立）、メゾン・イノグラムス（1947年設立）を経て、日本CI協会（1957年設立）へと発展。櫻澤の死後、妻の桜沢里馬が同協会の会長となり、久司道夫、大森英桜、岡田周三らが後継者としてその意志を継ぎました。

貿易商から食養家へ

祇園で生まれた櫻澤は、幼い頃に両親を亡くし、天涯孤独の身となりました。16歳で肺結核などを患い病苦に苛まれましたが、1912年、20歳の時に石塚左玄の食養に出会い、健康を回復。貧困の中で苦学を重ね、京都府立第一商業学校を卒業後、貿易会社に就職。神戸仏語学校も卒業し、第一次世界大戦の影響でロンドンの汽船会社の事務長となります。その後、貿易会社を転々としながら、食養会に入会し、雑誌『食養雑誌』に投稿を始めました。

1917年には貿易会社を設立し、欧米にも渡航。羽二重を輸出するなど事業を拡大する傍ら、1919年には雑誌『YOMIGAERI』を創刊し、大和言葉の復興を提唱。海外の書籍を翻訳し、詩集などを出版しました。1920年には、日本初の放送機と受信機をフランスから持ち帰り、ラジオ放送局の設立に貢献。1923年には日本デブリ社を設立し、撮影機やフィルムの輸入、小型カメラや映写機の特許取得など、多岐にわたる事業を展開しました。

パリでの活動と反戦運動

1929年、櫻澤は食養の成果を世界に広めるため、無銭旅行を敢行。シベリア鉄道をわずかなお金と握り飯で乗り越え、パリに到着します。ソルボンヌ大学やパスツール研究所で学びながら、執筆活動を開始。当初は貧困生活を送りましたが、1931年に書籍を出版すると、東洋思想の紹介者としてヨーロッパで知られるようになり、アンドレ・マルローなどとも親交を深めました。

1935年に帰国すると、軍の参謀本部で講演を試みるなど反戦運動を展開。危険を避けるためフランスに渡りながらも、1936年には陰陽の理論に基づいた『根本無双原理・易』を出版。1937年には食養会の会長に就任しますが、その後脱退。

無双原理講究所と世界平和への希求

1940年、櫻澤は無双原理講究所を開設し、陰陽を様々な角度から解説した「無双原理の研究」シリーズを出版。1941年には国際問題の言論に復帰し、アドルフ・ヒトラーに献辞した書籍を出版するなど、過激な思想も展開しました。しかし、反戦を訴えた書籍が発禁処分となり、憲兵隊による取り調べを受けるなど、苦難の日々を送ります。

敗戦後、櫻澤は釈放され、世界連邦運動に取り組み、平和を訴えました。1948年には新聞『世界政府』を発刊し、各地で講演会やラジオ放送も行いました。しかし、『日本を亡ぼす者はダレだ』が原因で公職追放を受け、日吉にメゾン・イノグラムスを開設。再び世界各地を訪ね、マクロビオティックの普及に尽力しました。

1960年代には、原子転換の研究にも関心を寄せ、自ら考案した装置で実験を行ったとされています。1966年4月24日、心筋梗塞により死去。彼の遺志は、妻や後継者たちによって受け継がれ、マクロビオティックは世界中に広まっています。

櫻澤如一の遺産

櫻澤如一は、マクロビオティックの提唱者として、食と健康、そして平和を追求した思想家でした。彼の著書は100冊を超え、フランス語、英語、ドイツ語など多言語に翻訳され、世界中の人々に影響を与えました。彼の思想は、現代においても色褪せることなく、私たちに食生活のあり方、生き方そのものを見つめ直すきっかけを与えてくれます。

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