梅之木遺跡

梅之木遺跡：縄文時代の環状集落

梅之木遺跡は、山梨県北杜市に位置する縄文時代中期中葉から末葉にかけての環状集落遺跡です。2014年3月18日に国の史跡に指定され、その学術的な価値が認められています。

遺跡の概要と特徴

遺跡は、八ヶ岳南麓の標高770～790メートルの尾根筋に位置し、湯沢川の南側の西向き斜面に広がっています。2003年の土地改良事業に伴う調査で、貴重な縄文時代の集落遺跡であることが判明し、2004年から2007年にかけて本格的な発掘調査が行われました。

遺跡は外径約100メートル、内径約40メートルの環状をなし、その内部に竪穴建物が建てられた環状集落です。集落の中央には、建物遺構が確認されない「中央広場」と呼ばれる空間があります。発掘調査では、147軒の竪穴建物と約400基の土壙が確認されており、縄文時代の生活の痕跡が色濃く残っています。また、縄文時代の遺構に加えて、弥生時代の土壙や平安時代の竪穴建物、掘立柱建物なども発見されています。

縄文の道

集落の北側には湯沢川が流れており、川と集落の間には比高12メートル、傾斜25度の急斜面があります。調査の結果、集落と川を結ぶ幅約1メートルの道状遺構が発見され、「縄文の道」と呼ばれています。この道は、斜面を削って平坦面を造成し、環状集落と川岸の遺構を約70メートルにわたって直結しています。出土した遺物が縄文中期の曽利式土器に限られることから、この道は縄文時代に造られたものと考えられています。

川岸の遺構

縄文の道を下った川岸には、敷石建物跡や集石土壙などの遺構が存在します。敷石建物跡は、縄文中期の曽利Ⅳ式期の建物跡と推定されていますが、同時期に台地上に集落があるにもかかわらず、なぜ川岸に建物を建てたのかは謎に包まれています。集石土壙からは、熱で変色した石が多数見つかっており、調理に関わる遺構と考えられています。

また、谷を挟んだ対岸の北側でも調査が行われましたが、縄文中期の環状集落に対応する遺構は確認されませんでした。

遺跡の意義

梅之木遺跡は、台地上の環状集落、急斜面を下った川岸の遺構、そしてこれらを繋ぐ道の存在から、縄文時代中期の生活を立体的に把握できる貴重な遺跡です。特に、川岸に存在する山梨県下で最古級の敷石建物は、当時の生活の多様性を示唆するものとして注目されています。

遺跡は、縄文時代の集落構造や生活様式を理解する上で重要な資料を提供しています。今後の研究によって、縄文時代の文化や社会について、より深く知ることが期待されます。

参考文献

北杜市教育委員会『北杜市埋蔵文化財調査報告2：梅之木遺跡IV』北杜市教育委員会、2005年。
北杜市教育委員会『北杜市埋蔵文化財調査報告12：梅之木遺跡V』北杜市教育委員会、2006年。
北杜市教育委員会『北杜市埋蔵文化財調査報告21：梅之木遺跡VI』北杜市教育委員会、2007年。

関連情報

星降る中部高地の縄文世界（文化庁日本遺産ポータルサイト）
* 星降る中部高地の縄文世界 (jomonheritage) - Facebook

もう一度検索