梅山聞本

室町時代に活躍した曹洞宗の禅僧、梅山聞本（ばいさん/ばいざん もんぽん）は、美濃国で生を受けました。幼い頃に律宗の寺院に入り仏道を歩み始めた彼は、その後、禅の教えを深く求めるようになります。京都の建仁寺で孤山至遠に師事して禅に触れた後、能登国にある曹洞宗の大本山、総持寺へと移り、太源宗真の門下に入りました。梅山は、太源宗真のもとで曹洞宗の教義と修行法を徹底的に学び、その基礎を確立しました。太源宗真は当時の曹洞宗を代表する高僧の一人であり、そのもとでの修行は梅山の僧侶としての将来を決定づける重要な期間となりました。

梅山聞本の生涯において特筆すべき功績の一つは、越前国（現在の福井県）における活動です。永徳2年（1382年）、越前の有力者であった小布施義氏の要請を受け、梅山は越前山田庄に龍澤寺を開創しました。梅山はこの龍澤寺を、自身が学んだ総持寺派の教えを北陸地方に広めるための重要な拠点と位置づけ、その発展に力を注ぎました。彼はこの地で多くの求道者を受け入れ、優れた弟子を育成しました。中でも、後に高僧として知られる傑堂能勝や如仲天誾は、梅山の薫陶を受けた弟子として名を残しています。龍澤寺は梅山の指導力のもと、北陸における曹洞宗教団の発展において中心的な役割を担うようになりました。

梅山聞本の徳望は次第に高まり、明徳元年（1390年）には朝廷の勅命により、能登の大本山総持寺の第十一世門首に就任しました。これは、彼が曹洞宗において指導的地位を確立したことを示す出来事です。
また、梅山は室町幕府の将軍、足利義満と足利義持の二代から厚く帰依されました。将軍義満は梅山の高徳を敬い、度々京都への招請を行いましたが、梅山はこれを丁重に断りました。当時の京都は政治的な混乱が続いており、梅山は仏道修行に専念するため、政治の中心地から距離を置くことを選んだと考えられます。政治権力からの干渉を避ける梅山の姿勢は、彼の清廉さを示すものとして伝えられています。三代将軍義持も梅山を深く敬愛しており、父である義満の七回忌法要を梅山に依頼した記録が残っています。将軍家からのこのような厚い信頼は、梅山が当時の社会でいかに尊敬されていたかを示しています。

晩年、梅山聞本は総持寺内の龍華院にて静かに過ごしました。応永24年（1417年）9月7日、梅山はその波乱に満ちた生涯を閉じ、入寂しました。
梅山聞本は、越前龍澤寺の開山を通じて北陸における曹洞宗の基盤を固め、多くの優れた弟子を育てました。また、総持寺門首として教団全体を導き、将軍家からの篤い帰依を受けながらも、権力とは一線を画し、純粋な仏道を歩み続けたその生き方は、後世の僧侶たちにも大きな影響を与えました。
今日でも、梅山が開創した龍澤寺では、毎年9月7日の忌日に合わせて「開山忌」が営まれています。この法要では、梅山聞本像が本尊として開帳され、参列者は梅山の遺徳を偲びます。梅山聞本の功績は、室町時代の曹洞宗の発展に不可欠なものであり、彼の教えと精神は、現代の曹洞宗にも受け継がれています。

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