律宗

律宗の概要

律宗（りっしゅう）は、戒律の研究とその実践を主な特徴とする仏教の宗派です。宗派の起源は、中国の東晋時代にまでさかのぼり、唐代には道宣によって体系的に確立されました。日本には、僧侶の鑑真が訪日し、律宗の教えを広めたことで知られています。

中国の律宗の歴史

中国における律宗の成立は、戒律に関する研究の歴史と深く結びついています。特に、東晋時代には『十誦律』や『四分律』、さらには『摩訶僧祇律』が漢訳され、戒律の研究が活発になりました。その後、北魏時代には法聡によって四分律宗が普及し、慧光は律宗の影響力を拡大しました。

唐代に入ると、南山律宗を設立した道宣は、『四分律行事鈔』を著し、戒律学の発展に寄与しました。道宣は慧光の流れを汲む宗派の指導者であり、その門下からは多くの著名な僧侶が輩出されました。また、法礪も『四分律』に関する研究を進め、相部宗を創立しましたが、後に懐素がそれを批判し、東塔宗を興しました。南山宗は名声を保ち、宋代まで影響を持ち続けました。

日本における律宗の展開

日本において、戒律は比較的早期に伝わったものの、当初は不完全でその価値が十分に理解されていませんでした。それは、限られた寺院での研究にとどまり、授戒の儀式も行われていなかったためです。753年に鑑真が東大寺に渡り戒壇を開設し、初めて律を授けたことは、律宗の成り立ちにとって重要な出来事でした。その後、唐招提寺を本拠地として戒律の研究が続けられました。

平安時代に入ると、最澄や空海がそれぞれ独自の戒律観を持ち、受戒に関する活動が散発的になりました。最澄は延暦寺に戒壇を設置しましたが、空海は『十誦律』を重んじながらも東大寺での受戒を重視しました。この結果、戒律に対する考え方が分散し、律宗は次第に衰退していきました。

しかし、鎌倉時代に実範や明恵が戒律の復興を論じ、その後、覚盛、叡尊らが新たな受戒の形態を模索しました。覚盛は唐招提寺を再興し、叡尊は真言律宗を確立しました。また、俊芿によって南宋からの新しい律宗が持ち込まれ、その結果、唐招提寺派、真言律宗、そして新たな律宗が並立する事態となりました。これを契機に律宗の深化が見られ、やがて禅宗との融合が進みました。

現代の律宗

室町時代に入り、律宗は禅宗の影響を受けることで再び衰退しますが、江戸時代には数名の僧侶によって戒律復興が再び唱えられました。明治初期には、多くの律宗寺院が真言宗に吸収される中、唐招提寺だけが独立を保ちましたが、1900年に律宗として認められるに至りました。

宗義と本山

律宗の主要な宗義は戒律の研究と実践です。ここで、律宗の総本山は奈良市に位置する唐招提寺で、大本山は京都市にある壬生寺です。律宗は『四分律』を基に成立し、教義の中心となっています。

律宗は、日本の仏教の中で特有な位置を占め、戒律に基づく指導とその実践を学ぶ重要な存在であり続けています。

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