梯子乗り

梯子乗りは、垂直に立てられた梯子の上で、様々な曲芸を披露する日本の伝統芸能です。その起源は、江戸時代の消防や鳶職の活動に深く根ざしており、複数の説が存在します。

梯子乗りの起源

消防出初式との関連: 一説には、万治2年（1659年）に上野東照宮前で行われた出初式が起源とされています。これは、消防出初式の発端となった出来事であり、その中で梯子乗りが行われていたという説です。
見世物としての発展: また、延宝年間には「はしごさし」という見世物が行われており、これが梯子乗りの原型になったという説もあります。この見世物は、大衆娯楽として人気を博していたようです。
町火消との関連: 享保3年（1719年）に町火消が誕生した際、火災の方角を確認するために、身軽な若者が梯子に登ったことが始まりという説も有力です。この行動が、技術や技を伴う梯子乗りへと発展したと考えられます。
鳶職の訓練: さらに、町火消の中心となった鳶職が、仕事前の準備運動や訓練として梯子乗りを行っていたという説も存在します。鳶職の身体能力やバランス感覚が、梯子乗りの技術向上に繋がったと考えられます。

現在の梯子乗り

現在では、消防出初式で消防士や消防団員が、その技術を披露することが一般的です。また、鳶職の組合が正月の行事などで梯子乗りを披露することもあります。これらの場では、伝統的な技が継承され、観客を魅了しています。しかし、梯子乗りは危険を伴うため、落下による重傷・重体事故が稀に発生することもあります。そのため、十分な安全対策と熟練した技術が不可欠です。

梯子乗りの技

梯子乗りには、様々な技が存在します。

頂上技: 梯子の頂上で行う技で、「遠見（とおみ）」「八艘（はっそう）」「邯鄲（かんたん）」「背亀（せがめ）」「鯱（しゃち）」などがあります。遠見や八艘には、応用技として「狐遠見」「爪八艘」といった種類も存在します。
返し技: 梯子から降りる際に行う技で、「肝潰し（きもつぶし）」「藤下がり（ふじさがり）」「館返し（やかたがえし）」「大返り（おおがえり）」などがあります。
途中技: 梯子の途中で行う技で、「腕溜め（うでため）」「吹流し（ふきながし）」「谷覗き（たにのぞき）」「駒鯱（こましゃち）」などがあります。
わっぱ: 梯子の中央部分で行う技で、「逆さ大の字（さかさだいのじ）」などがあります。
* 二人乗り: 複数人で梯子に乗って行う技もあり、「子亀吊るし（こがめつるし）」などが知られています。

これらの技は、それぞれの団体や地域によって多少の違いがあり、その多様性が梯子乗りの魅力を形作っています。梯子乗りは、単なる曲芸ではなく、歴史と文化が息づく伝統芸能として、今後も継承されていくことが期待されます。

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