森信親

森信親の経歴と金融庁長官としての活動

森信親（もり のぶちか、1957年生まれ）は、日本の金融政策に携わった著名な官僚であり、金融庁の第9代長官を務めました。東京都出身で、父親は旧通商産業省にて非キャリア職員として働いていました。彼は1975年に東京大学理科二類に入学し、当初は理系の道を選びましたが、次第に国際問題に関心を持ち、文系へ転向しました。1977年には東京大学教養学部の国際関係論へ進学し、1980年に卒業、その後、旧大蔵省（現財務省）に入省しました。

入省後、森は国際金融局の国際機構課に配属され、国際的な金融政策の形成に携わることとなります。2006年には金融庁に転職し、検査局長や監督局長を歴任し、2015年に金融庁長官に任命されました。長官としての在任中、地方銀行の再編問題に取り組み、特に横浜銀行の経営には大きな影響を与えました。彼は、長年にわたり大蔵省出身の頭取が就任していた同銀行において、優秀な生え抜きの人材を頭取に据えることで新たな風を吹き込みました。

その一方で、彼の在任中にはさまざまな課題に直面しました。ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の経営統合を進めようとした際、これに対して公正取引委員会との間に摩擦が生じ、特に村本孜金融庁参与がまとめた報告書に対する公正取引委員会の不満が原因となり、実際の業務は膠着状態に陥りました。

また、彼がその先見性から柔軟な監督を行っていた仮想通貨分野でも、Coincheckからの大量流出事件が発生し、その結果、監督体制の見直しを迫られる事態になってしまいました。このような中で、必要な対策を講じどのように業界を守るかに悩むこととなります。

さらに、日本郵政の長門正貢社長との対立もありました。特に、ゆうちょ銀行の預入限度額の変更に関する議論では、長門社長の発言に対して厳しい批判を行い、彼との関係は緊張状態にありました。

一方で、かつては「地銀のお手本」と評されていたスルガ銀行において、不正融資が発覚し、森はその対応に迫られる事態となりました。最終的には、中村直人委員長による第三者委員会の調査を受け、行政処分も検討せざるを得ない状況に至りました。こうした一連の出来事は、森に対する批判が高まる要因となり、結果的に2018年に金融庁長官を退任する原因となったのです。

退任後、彼は渥美坂井法律事務所の外国法共同事業顧問として、また日本金融経済リサーチの代表取締役、ANAホールディングス顧問や、西武ホールディングス顧問としても活動しています。さらに、コロンビア大学では国際関係と公共政策の分野で非常勤教授や上席研究員を務めており、2020年にはアフラック・インコーポレーテッドの社外取締役にも任命されました。加えて、2022年には東京大学大学院経済学研究科附属金融教育研究センターの招聘教授としても活動しています。

森信親は、金融政策や地方銀行改革に多くの影響を与えた一方で、さまざまな課題にも直面した官僚であり、その活動は今後の金融行政にも影響を及ぼすことでしょう。

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