森林公園検修区

東武鉄道森林公園検修区

東武鉄道鉄道事業本部車両部が管轄する森林公園検修区は、埼玉県比企郡滑川町に所在する大規模な車両基地です。東武東上線系統（東上本線および越生線）で運用される車両の全数がここに配置されており、これらの路線の日常的な運行を支える重要な機能を果たしています。

この検修区の歴史は、1929年（昭和4年）に川越市駅の隣接地に開設された川越電車庫（後に川越電車区と改称）を前身とします。当時の川越の施設は収容能力が限界に達したため、東上線系統の車両管理機能を集約し、強化する目的で1971年（昭和46年）3月1日、現在の場所である森林公園駅の西方、小川町方面寄りの隣接地に移転しました。構内は東上本線の下り線に沿って広がり、森林公園駅の小川町方にある下り線に接続されており、ここを通じて車両の入出区が行われます。

検修区の主要な業務は、配置車両の保守と検査です。定期的な月検査や列車検査といった検修作業をはじめ、車両保守担当者による構内での車両入換や信号取扱業務なども行われています。

沿革

1914年（大正3年）5月1日：現在の川越市駅にあたる川越町駅が開業し、駅に隣接する形で車両の留置線が設けられました。
1929年（昭和4年）10月：川越町駅の隣接地に、東上線における初の本格的な車両基地として川越電車庫が発足しました。
時期不詳：川越電車庫は、川越電車区へと名称が変更されました。
1971年（昭和46年）3月1日：従来の川越電車区から、東上線系統の電車基地機能の全てが現在の森林公園へ移転し、新たな施設での運用が開始されました。

設備

広大な検修区構内には、車両のメンテナンスに必要な様々な設備が整備されています。

月検査を行うための検査線：2線
列車検査を行うための検査線：3線
局修（比較的簡単な修繕）を行うための線：1線
車両洗浄を行うための洗浄線：6線
車輪を削正するための転削台：1台

現在の配置車両

東上線系統の運用を担う、複数の形式の車両が配置されています。

8000系：主に森林公園〜寄居間および越生線でのワンマン運転に対応した4両編成が在籍しています。これらの編成の一部は、ワンマン区間の拡大に伴い、森林公園〜小川町間での営業運転でATCを使用できるよう改修されました。かつて配置されていた2両編成の一部には秩父鉄道のATSが搭載されていましたが、現在は他区への転属や廃車となっています。また、東上線開業100周年記念でリバイバルカラーに塗装された編成や、「フライング東上」色を纏った編成など、特別な外装を持つ車両も運用されています。

9000型・9050型：東京メトロ副都心線など、地下鉄への直通運転に対応した形式です。9000型が8編成（80両）、9050型が2編成（20両）、計10編成100両が配置されています。副都心線開業に向けて、量産先行車の9101Fを除く全編成が当検修区で副都心線対応の改造工事を受けました。改造対象外となった9101Fは、地下鉄直通運用からは外れ、地上線での池袋発着運用に限定されています。

10000型・10030型：主に池袋〜小川町間の地上運用で活躍する車両です。10両、6両、4両といった様々な編成があり、10030型の一部の編成にはリニューアル工事が実施されています。東上線でのATC稼働開始に伴い、6両編成と4両編成を組み合わせた10両編成としての運用が主体となり、組成相手が固定されました。中間に連結される先頭車（クハ16630・クハ11430）は、前照灯の撤去や転落防止幌の設置など、事実上の中間車として改造されています。特にリニューアル済みの6両+4両組成の一部編成は、中間車の運転台機器が完全に撤去され、実質的な10両固定編成となっています。かつては本線系統との間で車両の移動が多く見られましたが、近年は東上線独自の保安装置が必要なため、転属時には改造が必要となっています。また、過去には本線から転入した8両編成と2両編成を組み合わせた編成も存在しましたが、これらの編成は後にリニューアル工事を受けて春日部検修区へ転出しました。

30000系：元々半蔵門線直通のために製造された形式ですが、2011年以降、南栗橋車両管区から4両編成と6両編成が順次転入し、これらを組成した10両編成として東上線の地上運用に投入されました。地上運用化に伴い、運行番号表示器の撤去や、中間に組み込まれる先頭車（クハ36600・クハ31400）の機器撤去や転落防止幌設置など、事実上の中間車とするための改造が施されています。乗務員室のレイアウトも変更されています。順次転入が進み、2021年には最後に残っていた半蔵門線直通編成も加わり、現在では30000系全車両（6両・4両各15編成、計150両）が当検修区に配置されています。これらの転入に伴う改造工事は、当初は当区構内で行われましたが、2013年度以降は南栗橋車両管区で実施されるようになりました。

50000型・50070型・50090型：2004年度より導入されている東上線の最新形式です。いずれも10両編成で、地上線運用の50000型、地下鉄直通運用の50070型、座席指定制列車「TJライナー」用の50090型が配置されています。過去には一部の50000型編成が、30000系との車両トレードにより南栗橋車両管区へ転出しています。なお、相互直通運転を行っている東京メトロや東急電鉄の車両の一部も、運用の都合で当検修区に夜間留置されることがあります。

過去の配置車両

過去には、現在とは異なる形式の車両が多数配置されていました。

3000系：戦前に製造された旧型車両を更新した非冷房車でした。8000系の増備に伴い、1972年に全編成が野田線へ転属し、東上線では20m級車両に統一されました。
5000系・5050系：東上線と本線系統の間で転属を繰り返しながら運用されましたが、最終的に1990年に全編成が野田線へ転出しました。
7300系・7800系：川越電車区からの移転時に8000系と共に配置され、東上線の主力車両の一つでした。10000系などの後継車両の投入に伴い、運用範囲が縮小され、最終的に廃車や5070系への更新により姿を消しました。
クエ7000形：救援車として7002号が川越電車区から移転時に配置されましたが、一度も使用されることなく1978年に廃車されました。
8000系（ワンマン非対応車）：1963年の登場以来、様々な編成（2両、4両、6両、8両）が多数配置され、東上線で長きにわたり活躍しました。非冷房車から新製冷房車まで存在しました。本線系統からの30000系転入や、池袋〜小川町間のATC化に伴い、2両編成および8両編成の旅客営業運転は2015年1月17日をもって終了しました。

イベント

一般の鉄道ファンや地域住民向けのイベントも開催されていました。

一般公開イベント：2006年から2014年頃まで、年に数回、検修区の一部が一般に公開され、車両撮影会や鉄道グッズ販売などが行われました。東上線クリスマスイベントとして開催されたこともあります。
* TJライナー10周年記念ファン感謝ツアー：2018年にはTJライナー運行開始10周年を記念したイベントツアーが開催され、その一環として当検修区で参加者向けの車両撮影会が実施されました。この際には、TJライナー用の50090系や8000系などが展示されました。

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