森歓之助

森 歓之助（もり かんのすけ、1894年 - 1960年）は、日本の近代造園界を牽引した重要な人物であり、優れた造園家、作庭家、そして教育者でした。彼は教育の場で多くの後進を育成する傍ら、国内外で数々の造園作品を生み出し、その業績は多岐にわたります。特に、住宅庭園、公園緑地、遊園地、学校庭園など、多様な空間の設計や施工監督指導を手掛け、その作品数は非常に多いことで知られています。

佐賀県唐津市に生まれた森は、1914年（大正3年）に千葉県立園芸専門学校（現在の千葉大学園芸学部）を卒業後、造園の実務経験を積むため、当時宮内省御用達の植木師として名高かった東京府下戸塚の小川重次郎のもとで徒弟として学びました。この初期の実務経験は、彼のキャリアの基礎を築く上で重要な期間となりました。

1915年、森は恩師である本郷高徳の推薦を受け、大阪府の職員となります。ここで、彼は大屋霊城と共に、府が推進していた住吉公園の改良工事に携わりました。このプロジェクトは、彼の公的なキャリアの始まりを告げるものであり、大規模な公園整備に初期から関わる貴重な機会となりました。

その後、森は教育者としての道を歩み始めます。1922年には、母校である千葉県立高等園芸学校（1914年に改称）に助教授として着任しました。1929年に同校が文部省に移管され、千葉高等園芸学校として国内唯一の官立高等園芸学校となった後も、彼は教育活動の中心を担います。

森の教育者としての視野を広げたのは、1931年（昭和6年）から1934年にかけて行われた欧米への長期視察でした。特に、米国マサチューセッツ州立大学造園学部では1年間集中的に造園学の研究に取り組み、海外の先進的な知識や技術を吸収しました。この経験は、帰国後の教育および実務に大きな影響を与えました。1934年には同校の教授に昇進し、1944年に退職するまでの長きにわたり、日本の造園界を支える多くの人材の育成に尽力しました。

千葉高等園芸学校を退官した後も、森の活動は衰えることなく続きました。彼は民間企業のアドバイザーを務める一方で、東京農業大学、恵泉女子大学、山形大学など、各地の大学で造園学の講義を担当し、引き続き教育に関わりました。また、欧米での留学経験から培った堪能な語学力を活かし、しばしば海外各地に長期出張して、現地での造園技術指導や設計施工の監督にあたりました。これは、日本の造園技術や文化を国際的に紹介する貴重な機会となりました。

海外における彼の著名な業績としては、1958年（昭和33年）にコロンボ・プランの政府派遣技術者としてインドに滞在し、デリーおよびニューデリーを中心に数多くの日本庭園や公園の設計を手掛けたことが挙げられます。さらに翌年の1959年には、カナダ・バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学の構内に、故・新渡戸稲造博士を記念する庭園の設計施工を担当しました。このカナダ滞在中、彼は同大学の客員教授として1年間、造園学の講義も行い、教育と実務の両面で国際交流に貢献しました。

森歓之助は、国内外での精力的な活動を続ける中、1960年に予期せぬ形でその生涯を閉じました。長崎県諌早市にある県立農林センターの造園に関する設計指導に出張した帰り道、大阪国際空港で急逝したのです。

森歓之助が残した業績は、教育者として多くの人材を育てたこと、そして住宅庭園から大規模な公園、さらには国際的なプロジェクトに至るまで、多岐にわたる造園作品を手掛けたことにあります。彼の活動は、日本の造園学の発展と国際的な認知度向上に大きく貢献しました。その広範かつ深い貢献は、今日の日本の造園界においても高く評価されています。彼の人生と業績をたどるには、浅野二郎氏による研究や、森先生記念出版会が編纂した資料などが重要な参考文献となっています。

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