森滝市郎

森滝市郎の生涯と業績

森滝市郎（森瀧市郎、1901年4月28日 - 1994年1月25日）は、日本の著名な倫理学者であり、原水爆禁止運動に尽力した活動家です。彼の業績は日本の戦後の核問題に対する認識を大きく変え、広島の歴史に深く根付いています。

初期の経歴

森滝市郎は広島県双三郡君田村（現在の三次市）で生まれました。1925年に広島高等師範学校の文科部を卒業し、その後県立三次中学校の教員として働き始めました。しかし、彼はさらなる学問の探求を目指し、1927年に京都帝国大学文学部哲学科に進学しました。1930年に卒業し、さらに大学院に進学、1931年に修了しました。その後、広島高師で教授として教壇に立つこととなります。彼は同年に西しげと結婚しました。

被爆とその影響

1945年の原爆投下時、森滝は広島高師の教官として学生を引率していた際に被爆しました。彼は爆心地から約4キロメートルの位置にいた三菱重工広島造船所の江波工場で、爆風によって飛散したガラスの破片で右目を失いました。この出来事は彼の人生と活動に大きな影響を与えました。1953年、彼は「英国倫理研究」を理由に広島文理科大学から文学博士の学位を取得し、広島大学に教授として迎えられました。

原水禁運動への参加

1954年の第五福竜丸事件を契機に、森滝は原水爆禁止運動に積極的に参加しました。彼は原水爆禁止広島県民運動本部の事務局長に就任し、原水協や被団協の設立に尽力しました。1960年には日本原水爆被害者団体協議会の理事長となり、被爆者援護法の制定を目指して活動を続けました。彼はまた、1965年に分裂した原水協の後、新たに結成された原水爆禁止日本国民会議の代表委員にもなりました。1960年代後半には、彼の反核活動において、核兵器の平和利用にも反対する姿勢を明確にし、1976年の原水爆禁止世界大会ではその決意を表明しました。

国際的な活動

森滝は国内に留まらず、国際的な反核運動にも積極的に参加しました。1981年には西ドイツのドルトムントで行われた集会で、英語とドイツ語で核戦争反対を力強く訴え、「ノーモア・ヒロシマ！」と叫びました。彼のメッセージは国を越えて広がり、核兵器の恐怖を訴える重要な役割を果たしました。

家族や後進への影響

森滝は、妻しげとの間に姉妹をもうけ、その二人も彼の運動に影響を受けました。長女の安子は被爆体験を記した手記を残し、次女の春子は父の運動を支える活動を行いました。春子は核廃絶のためのヒロシマの会の共同代表としても活動し、父の遺志を受け継いでいます。

結論

森滝市郎は、倫理学者としての単なる職業を超え、被爆体験を通じて人類の未来について深く考え、行動を起こした人物です。彼の活動は、核兵器の脅威を訴えるだけでなく、平和と倫理についての重要な議論を促進しました。彼の生涯は、核の問題に対する意識を高め、次世代への教訓を残したのです。

もう一度検索