森脇大五郎

森脇大五郎：集団遺伝学の先駆者

森脇大五郎（1906年10月12日 - 2000年4月25日）は、日本の著名な生物学者であり、特に集団遺伝学の分野で多大な貢献をしました。理学博士の学位を持ち、旧・東京都立大学（現・首都大学東京）の名誉教授を務めました。

生涯

大阪府に生まれた森脇は、東京帝国大学（現・東京大学）を卒業後、府立高等学校で教鞭をとりました。1938年には東京大学から理学博士号を授与されました。博士論文のテーマは「The genetics of some mutant character in Drosopila ananassae(アナナス猩々蠅に於ける突然変異形質の遺伝)」でした。戦後の教育改革期には、東京都立大学附属高等学校の校長（1946年-1950年）として学校運営に携わり、その後、1949年に東京都立大学の教授に就任、後に学長も務めました。

研究者としての活動に加えて、森脇は教育者、研究組織のリーダーとしても活躍しました。1956年には日本遺伝学会賞を受賞。1969年から1975年まで国立遺伝学研究所の第3代所長を務め、1975年から1979年までは理化学研究所の理事を歴任しました。

研究内容

森脇の専門は集団遺伝学であり、特にショウジョウバエを用いた研究で知られています。ショウジョウバエを使った研究から細胞質遺伝や数多くの突然変異を発見するなど、遺伝学の発展に大きく寄与しました。1955年には皇居に招かれ、生物学に関する合同進講において「遺伝 ショウジョウ蝿の集団遺伝」と題する講演を行いました。

人物像

研究者としての業績に加え、森脇は人格者としても知られていました。作家の童門冬二が都庁の課長に就任した際、都立大学理学部の事務長であった森脇は、理学部長として童門に「理学部というのは原理を教えるところだ。そして工学部というのは応用を教えるところだよ。これは両方大事なんだ。たとえて言えば、川は美しくなければいけないと教えるのが理学部なんだ。しかし、どうすれば美しくなるか、あるいは美しく保てるか、こういうことを考えるのは工学部なんだよ。だから、理論と原理と応用、両方とも大事なんだよ」と語ったというエピソードが残されています。

森脇の知見の深さや、学問に対する真摯な姿勢がうかがえる逸話です。

業績と影響

森脇の遺伝学研究における貢献は大きく、その功績を称え、日本ショウジョウバエ研究会では若手研究者を奨励するための「森脇大五郎賞」が創設されました。また、日本遺伝学会会長、日本動物学会名誉会員、日本放射線学会名誉会員を歴任するなど、学会の発展にも尽力しました。

家族

兄は造園家の森脇竜雄、子息は森脇和郎（総合研究大学院大学教授）です。

著書

『ショウジョウバエの遺伝と実験』（編著、駒井卓、培風館、1952年）
『放射線生物学』（監修、玉木英彦・村地考一、裳華房、1959年）
『細胞・遺伝』（監修、小野記彦編、中山書店、1966年）
『ショウジョウバエの遺伝実習』（編著、培風館、1979年）
『現代生物学大系』（監修、沼野井春雄・八杉龍一、相見霊三・飯塚廣・小野記彦編、中山書店、1986年）
『遺伝学ノート』（単著、学会出版センター、1988年）




森脇大五郎は、研究者、教育者として、日本の生物学、特に遺伝学の発展に大きく貢献した人物として、その名が記憶されています。

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