植村邦彦

植村邦彦（うえむら くにひこ）は、1952年生まれの日本の社会学者、経済学者です。関西大学経済学部教授を経て、同大学の名誉教授を務めています。彼の専門は社会思想史であり、西洋の近代社会や市民社会における思想、そして近代ドイツ思想に関する研究を長年にわたり続けています。

学歴と職歴

愛知県出身の植村氏は、1975年に名古屋大学経済学部経済学科を卒業しました。その後、一橋大学大学院社会学研究科に進み、1981年に博士課程を修了、社会学博士の学位を取得しました。名古屋大学では平田清明教授に、一橋大学では古賀英三郎教授や良知力教授に師事しました。

1981年からは熊本大学で専任講師として教鞭を執り始め、1984年に助教授に昇進しました。1994年からは関西大学経済学部の教授として活躍し、2012年には経済学部長と大学院経済学研究科長を兼任しました。2022年に関西大学を退任し、現在は名誉教授として研究活動を続けています。

研究内容

植村氏の研究は、社会思想史を軸に、西洋近代の社会構造や思想的基盤を深く掘り下げています。特に、市民社会の概念や、近代ドイツ思想における社会理論の展開に焦点を当てています。彼の著作からは、社会学、経済学、そして思想史という幅広い学問領域を横断する視点が見られ、現代社会の複雑な問題を理解するための重要な手がかりを提供しています。

主な著書

植村氏は多数の著書を執筆しており、その中でも特に重要なものとして以下が挙げられます。

『隠された奴隷制』(集英社新書, 2019): 現代社会における構造的な不平等を考察した作品です。
『ローザの子供たち、あるいは資本主義の不可能性：世界システムの思想史』(平凡社, 2016): 資本主義の歴史と限界を思想史的に分析した作品です。
『市民社会とは何か――基本概念の系譜』(平凡社新書, 2010): 市民社会という概念の歴史的変遷を追究した作品です。
『アジアは「アジア的」か』(ナカニシヤ出版, 2006): アジアの社会構造や文化における独自性を考察した作品です。
『マルクスのアクチュアリティ――マルクスを再読する意味』(新泉社, 2006): マルクスの思想を現代的な視点から再評価した作品です。
『「近代」を支える思想――市民社会・世界史・ナショナリズム』(ナカニシヤ出版, 2001): 近代社会を支える思想的基盤を論じた作品です。
『マルクスを読む』(青土社, 2001): マルクスの主要な著作を解説した入門書です。
『同化と解放――19世紀「ユダヤ人問題」論争』(平凡社, 1993): 19世紀におけるユダヤ人問題に関する思想的論争を分析した作品です。
* 『シュルツとマルクス――「近代」の自己認識』(新評論, 1990): 近代思想におけるマルクスとシュルツの思想を比較した作品です。

編著と翻訳

また、編著として『思想史と社会史の弁証法――良知力追悼論集』(御茶の水書房, 2007)があり、翻訳ではカール・マルクスの『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日――初版』(太田出版, 1996, 平凡社ライブラリー, 2008)があります。

植村邦彦氏の研究は、現代社会が抱える課題を理解するための重要な視点を提供し続けており、社会思想史研究において不可欠な存在と言えるでしょう。

もう一度検索