植物防疫法

植物防疫法について

植物防疫法は、日本の農業生産を保護し、その発展を促進するために制定された重要な法律です。この法律は、植物の輸出入や国内移動に関する検疫、そして植物に有害な動植物の駆除と蔓延防止のための規制を定めています。この法律により、国内の農業生産は外来の病害虫から守られ、安定した食料供給が確保されています。

対象生物の定義

植物防疫法における生物の定義は、一般的な生物学の用語とは異なる場合があります。

植物

法律でいう「植物」は、一般的に言う植物から「有害植物」を除いたものを指します。植物全体だけでなく、種子、果実、加工品も含まれます。具体的には、「顕花植物、シダ類、または蘚苔類に属する植物」と定義されており、陸上植物が該当します。藻類やキノコなどは含まれません。

有害植物

「有害植物」とは、有用な植物に害を及ぼす「真菌、粘菌、細菌、寄生植物、ウイルス」を指します。これは非常に広義の定義です。

有害動物

「有害動物」は、有用な植物に害を及ぼす動物を指し、「昆虫、ダニなどの節足動物、線虫その他の無[[脊椎動物]]、または脊椎動物」と定義されています。原生動物が含まれるかどうかは不明確です。

検疫有害動植物

「検疫有害動植物」とは、国内での発生が確認されていないものや、国内での対策が必要な有害植物や有害動物のことです。これらは省令や告示によって指定され、輸入が原則として禁止されます。リスク分析によって特定され、施行規則の別表や告示に記載されます。

国際植物防疫

植物の輸入は厳しく制限されており、原則として輸出国の政府機関が発行する検査証明書が必要です。輸入される植物は、リスクの程度に応じて以下の区分に分けられ、それぞれ異なる規制が適用されます。

輸入禁止品

輸入が原則として禁止されており、試験研究目的などで農林水産大臣の許可を得た場合にのみ輸入が許可されます。これには、国内に未発生で、侵入すると農産物に大きな被害をもたらす可能性のある病害虫が付着している植物、検疫有害動植物そのもの、土のついた植物や土そのものが含まれます。

条件付き輸入解禁品

輸入禁止品の中でも、殺虫や殺菌などの処理によって安全性が確保できるものが該当します。

栽培地検査要求品

本来は輸入禁止とすべきですが、栽培地での検査が可能なものが該当します。輸出国の政府機関による栽培地検査証明書が必要です。

隔離検疫品

栽培用の種苗のうち、国内産業にとって重要なものが対象です。隔離された圃場で一定期間栽培し、検査を行います。

一般の植物

輸入の際には輸出国の政府機関による検査証明書が必要です。輸出国に植物検疫を行う政府機関がない場合は、日本の植物防疫所で検査を行います。

検査不要品

製材、家具、綿布、紙、塩蔵品など、高度に加工された製品は検査が不要です。

日本から外国へ植物を輸出する際にも、輸入国の規制により検査証明書が必要となるため、植物防疫所が検査を行います。

国内植物防疫

国内でも、害虫の拡散を防ぐための検疫が行われています。特定の地域から本土への植物の持ち出しが禁止されています。例えば、沖縄県や奄美群島などから本土へは、サツマイモやヒルガオ科の植物の持ち出しが禁止されています。

防疫に従事する官吏

植物防疫には、植物防疫官と植物防疫員が従事しています。

沿革

植物防疫法の歴史は、明治時代にまで遡ります。当初は虫害予防が中心でしたが、時代の変化とともに、植物の病害、輸出入検疫、国内検疫へと対象が拡大されてきました。

1885年：各府県に田圃虫害予防規則の制定を指示。
1896年：害虫駆除予防法制定。
1902年：害虫駆除予防法改正、病害も対象に。
1913年：輸出植物検疫証明規程制定。
1914年：輸出入植物取締法制定。
1948年：輸出入植物検疫法制定。
1950年：植物防疫法制定、国内検疫を導入。
1951年：発生予察事業を法制化。
1971年：沖縄復帰に伴い、国内植物の移動規制導入。
1996年：検疫対象をネガティブリスト方式で限定、電算化対応。
2004年：改正。



植物防疫法は、農業生産を守るために重要な役割を果たしており、その内容は時代の変化に合わせて改正されています。

関連項目

検疫法
森林病害虫等防除法
出入国管理
貿易 - 検疫

外部リンク

植物防疫法 - e-Gov法令検索

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