原生動物

原生動物とは

原生動物（げんせいどうぶつ）とは、かつて単細胞生物のうち、動物的な生態を持つものの総称として用いられた分類群です。原虫とも呼ばれます。歴史的には、生物を動物と植物に二分する「2界説」の時代に、動物に分類される単細胞生物と定義されていました。しかし、実際には様々な生物の集まりであり、系統学的に見て妥当なグループではありません。

現在では、原生動物という分類群は、特定の生物グループを指すものではなく、伝統的なグループを大まかに表す総称として使われています。

原生動物の分類

古典的な分類

かつて原生動物は、動物界の1門「原生動物門」として扱われていました。その後、リチャード・オーウェンが原生動物を独立した「原生動物界」に引き上げ、ジョン・ホッグは原生動物と原生植物をまとめて「Primigenum界」を提唱しました。さらにエルンスト・ヘッケルは、このグループを「原生生物（Protista）界」と名付けました。

伝統的な分類では、原生動物は以下の4つの綱に分けられていました。

鞭毛虫綱：鞭毛を使って運動する生物。ミドリムシなどが含まれます。
肉質虫綱：アメーバのように、細胞の一部を動かして運動する生物。アメーバ、有孔虫などが含まれます。
胞子虫綱：細胞内寄生をする単細胞生物。マラリア原虫などが含まれます。
繊毛虫綱：繊毛を使って運動する生物。ゾウリムシ、テトラヒメナなどが含まれます。

鞭毛虫綱と肉質虫綱をまとめて「有鞭肉質虫綱」とすることもありました。また、胞子虫綱は後に細分化されました。

しかし、これらのほとんどは現在では、複数の界に分散して分類されています。特に鞭毛虫類の中には光合成を行うものも含まれており、実質的にほぼ全ての藻類が含まれていました。同様に、繊毛虫類以外の分類群は、いずれも多系統であると考えられています。

各群の内容

現在では原生動物という分類群は使われなくなりましたが、それぞれの群について簡単に説明します。

鞭毛虫綱：鞭毛を持つ真核単細胞生物のほとんどが含まれていました。光合成可能なものを植物性鞭毛虫、そうでないものを動物性鞭毛虫と呼んでいました。
植物性鞭毛虫：緑藻類、渦鞭毛藻類、ミドリムシ類、黄金色藻類などが含まれます。これらは藻類としても分類されており、プランクトンの図鑑では動物と植物の両方に登場することがありました。
動物性鞭毛虫：襟鞭毛虫、超鞭毛虫、トリコモナス類、トリパノソーマ類などが含まれます。これらの多くは多系統と考えられています。特に襟鞭毛虫は、動物と系統的に最も近いとされています。
肉質虫綱：細胞の一部を原形質流動によって動かし、足のように使う運動をするグループです。アメーバのほか、殻を持つ有殻アメーバや有孔虫、針状の骨格を持つ太陽虫や放散虫などが含まれます。この仲間は、現在では鞭毛虫以上に多系統の生物が複雑に入り混じっていると考えられています。
胞子虫綱：細胞内寄生をする単細胞生物で、胞子様の散布体を作る時期があるのが特徴です。アピコンプレクサ（マラリア原虫など）は渦鞭毛藻類や繊毛虫類と近縁であり、微[[胞子虫]]類は菌類から派生したと考えられています。粘液[[胞子虫]]は、多細胞動物が細胞内寄生によって体制を退化させたものと考えられています。
繊毛虫綱：現在も認められている分類群です。ティンティノプシスという種は、先史時代から現代まで生息しており、化石も発掘されています。

原生動物の再定義の試み

原生動物という分類が無意味だと考えられるようになってから、原生動物を再定義する試みも行われました。しかし、いずれも広く使われることはありませんでした。

8界説での原生動物

1993年、キャバリエ＝スミスは、ミトコンドリアを持つ真核生物のうち、動物、植物、真菌、クロミスタを除いた残りを原生動物と定義しました。この原生動物は、クロミスタという大きなグループを含まないものの、「進化した生物を除いた残り」というコンセプトは従来の原生生物に近いものでした。

修正6界説での原生動物

1998年には、キャバリエ＝スミスはミトコンドリアを持たない真核生物であるアーケゾアを原生動物に加えました。当初は原生動物はアーケゾア亜界とNeozoa亜界に分けられていましたが、次第にアーケゾアというグループ分けは無意味とされ、別の分類をするようになりました。

まとめ

原生動物は、かつては単細胞で動物的な生態を持つ生物の総称として用いられていましたが、現在では系統的な分類群としては使われていません。しかし、原生動物の歴史と分類を知ることは、生物の進化と多様性を理解する上で重要な意味を持ちます。

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