植草甚一

植草甚一について

植草甚一（うえくさ じんいち、1908年8月8日 - 1979年12月2日）は、映画、ジャズ、また欧米文学の評論で名を馳せた日本の文化人です。彼は一般に“J・J氏”と呼ばれ、そのユニークな視点や鋭い分析で多くのファンに支持されました。

生い立ちと教育

植草は東京の日本橋区に生まれ、商家の家庭に育ちました。幼少期から映画に親しみ、地元の映画館に通っては多くの作品に触れました。教育面では、東京府立第一商業学校を経て、早稲田大学理工学部に進学。しかし、大学では思うように成績が上がらず、最終的には除籍処分を受けることとなります。

映画評論家としての活動

1935年、東宝に入社し、その後映画評論を執筆するようになりました。彼の評論のスタイルは、そこに登場する自らの分身「シネマディクトJ」を通じて個性的で魅力的なもので、映画についての新たな視点を提供しました。1949年からは本格的に映画批評を手がけ、『キネマ旬報』や『映画之友』などで活躍しました。

ミステリーとジャズの関心

植草は映画だけでなく、ミステリー小説にも深く関わりました。1955年には東京創元社の『世界推理小説全集』の監修を務め、その選定した作品群は今もなお多くの読者に愛されています。また、1956年からはジャズにも興味を持ち始め、ジャズ評論を執筆するようになりました。この時期より、植草の名声が高まり、1960年代には特に若者たちの間で人気の文化人となります。

後半生と評価

1970年代に入ると、植草の文化的活動はますます活発化し、特にエッセイや雑誌の編集にも関わるようになります。1974年にはニューヨークに滞在し、現地の文化を独自の視点で捉えたエッセイを発表し、注目を集めました。彼の作品は、映画や音楽界での知識だけでなく、彼自身の豊かな人生経験から生まれたものといえます。

最期と遺産

1979年、心筋梗塞によって彼の生涯は幕を閉じましたが、彼が残した影響は計り知れません。彼が所有していた膨大なレコードコレクションは、ジャズ愛好者のタモリによって引き継がれ、多くの文化的資産が彼の死後も受け継がれています。また、著作や評論は現在でも多くの人々に読まれ、影響を与え続けています。その独自の視点は、今でも評価され、多くのファンに愛され続けています。

著作

植草は数多くの著作を残しており、代表作には『ジャズの前衛と黒人たち』や『ぼくは散歩と雑学が好き』、『映画だけしか頭になかった』などがあります。彼の作品は、映画やジャズ、文芸に関する深い洞察と独特のユーモアに満ちており、多くの読者に影響を与えています。

その生涯を通じて植草甚一が示した文化的洞察は、今もなお新しい世代に引き継がれ、彼の影響力は決して薄れるものではありません。

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