椿 (松型駆逐艦)

駆逐艦「椿」：激動の艦歴

「椿」は、日本海軍が誇る松型駆逐艦の1隻として、舞鶴海軍工廠で建造されました。日本海軍において2代目となる「椿」は、数々の戦場でその勇姿を見せ、激動の時代を生き抜いた艦として知られています。本稿では、その波乱に満ちた艦歴を詳細に解説します。

就役から護衛任務へ

竣工後、瀬戸内海で訓練を受けた「椿」は、第十一水雷戦隊に編入。その後、第一海上護衛隊に配属され、モタ38船団の護衛任務に就きます。この任務中に缶系統の不具合に見舞われましたが、修理を経て任務を継続しました。

第五十三駆逐隊編入と上海での事故

1944年3月、同型艦数隻と共に第五十三駆逐隊を編成。4月には、かつて日米間の交換船として活躍し、イタリアの降伏後に上海で引き揚げられた大型客船「コンテ・ヴェルデ」の日本への回航任務に就きます。「コンテ・ヴェルデ」（仮称「寿丸」）を護衛して上海を出港した「椿」でしたが、呉淞灯台沖で磁気機雷に触れ、艦後部に大きな損傷を受けました。この事故により、乗員に死傷者が出ました。

修理とシモ04船団護衛

上海の江南造船所で応急修理を受けた「椿」は、5月、シモ04船団の護衛任務に就きます。この船団は迂回航路を取り、油谷湾に到着。その後、「椿」は呉鎮守府部隊に編入され、呉海軍工廠で本格的な修理が行われました。しかし、ディーゼル発電機の不具合により修理は難航し、電気系統の完全な修復は終戦まで完了しませんでした。

備讃瀬戸での空襲と終戦

7月、備讃瀬戸に回航された「椿」は、アメリカ軍機の空襲を受け、大きな損害を受けました。終戦を迎えた際には、呉に停泊したまま中破状態で終戦を迎えました。その後、除籍され、1948年に解体されました。

艦長

「椿」の艦長には、宇那木勁少佐、田中一郎少佐、本多敏治少佐が就任しました。田中少佐は、終戦まで艦長を務め、その後本多少佐が艦長に就任しました。

参考文献

本稿では、以下の文献等を参考に記述しています。
海防艦顕彰会 編『海防艦戦記』
片桐大自『聯合艦隊軍艦銘銘伝』
木俣滋郎『日本水雷戦史』
佐藤和正『艦長たちの太平洋戦争』
佐藤和正『艦長たちの太平洋戦争』続編
外山操『艦長たちの軍艦史』
福井静夫『写真日本海軍全艦艇史』
歴史群像編集部 編『松型駆逐艦』
* アジア歴史資料センター

結論

駆逐艦「椿」は、短命ではありましたが、数々の任務を遂行し、日本海軍に貢献した艦でした。その激動の艦歴は、太平洋戦争の激しさを改めて認識させ、歴史の重みを感じさせるものです。 本稿が、その歴史の一端を伝える一助となれば幸いです。

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