椿油

椿油（つばきあぶら）について

椿油は、ツバキ科ツバキ属に属するヤブツバキの種子から抽出される植物性の油脂です。広い意味ではツバキ科のその他の樹木の種子から得られる油も含まれますが、一般的にはヤブツバキから採取されたものを指します。多くのオレイン酸を含むため、酸化しにくく、固まりにくい特性を持つことから、食用油としても高い評価を受けています。

歴史

椿油の利用歴は古く、『続日本紀』には、777年に渤海国の使者が帰国する際に椿油を所望したという記録が残っています。このエピソードからも、当時から椿油は価値ある油脂として重宝されていたことが伺えます。

用途

椿油は主に以下の3つの分野で利用されています。

1. 食用

椿油は天婦羅、炒め物、サラダ用のドレッシングなどに使用されます。特に長崎県の五島うどんでは、生地を引き延ばす際に地元の椿油を使用するという伝統があります。このように、椿油は料理の風味を引き立てるだけでなく、健康にも良い油として位置づけられています。

2. 化粧品

椿油は髪の保湿やスキンケア製品にも広く利用されています。特に、日本の長崎や五島列島、伊豆諸島産の椿油は純度が高く、多くの人々に重宝されています。また、椿油は鬢付け油としても用いられ、髪の艶を保つための重要な役割を担っています。

3. 医療・薬品

椿油は日本薬局方に収載されているため、医薬品の原料としても用いられています。特に、他の薬効成分と配合し、効果を高める役割を果たします。

4. 工業用

椿油は塗料や樹脂原料としても利用され、木製品の磨きやツヤ出しのためにも使用されています。特に、日本刀の磨き油として欠かせない存在となっています。

原料・産地

椿油の主な原料には以下のものがあります。

• - ヤブツバキ：東京都の伊豆大島や静岡県、長崎県（五島列島）などが有名な産地です。
• - サザンカ：長崎県諫早地方ではサザンカの種子から抽出されることが一般的です。この地域では、椿油を「カタシ油」と呼びます。
• - ユチャ：中国の湖南省や江西省で生産される代表的な原料です。
• - チャノキ：飲用茶として知られるが、種子からは油も搾取されます。

製法

椿油の抽出には主に2つの方法があります。

• - 圧搾法：種子を加圧して油分を分離する方法で、コールドプレスとも呼ばれています。この方法では、原料の味や成分が保たれやすいです。
• - 溶剤抽出：粉砕した種子に有機溶剤を混ぜて油分を抽出する方法です。この場合、効率よく油分を得ることができますが、精製プロセスが必要です。

健康効果

椿油やその配合シャンプーには脂漏性皮膚炎の原因菌や遊離脂肪酸の減少に効果があるとの報告があります。22名の調査では95%が「やや有用」との評価を示しています。

結論

椿油は、その古い歴史と多様な用途から、日本の文化において重要な役割を果たしている油です。食用、化粧品、医療、工業用など幅広い分野で活躍しており、今後もますます注目されることでしょう。

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