楊雄 (水滸伝)

楊雄（よう ゆう）について

楊雄は、中国の古典小説『水滸伝』に登場するキャラクターの一人であり、梁山泊の第三十二位の好漢として知られています。彼は「天牢星」としても名が知られ、その渾名は「病関索」と称されます。ここでの「病」という言葉は、病気を意味するのではなく、杭州方言で「良い」を示す接頭辞とされ、彼の性格や特性を反映しています。また、「関索」という名前は、『三国志演義』などに見られる架空の人物に由来し、宋・元代の実在の軍人にも用いられることがありました。

楊雄は河南出身で、武器としては棒を扱い、その武芸の技術は義弟の石秀よりも優れています。しかし、彼は性格がやや短気で直情的なため、計画性のある石秀に助けられる場面も多く、二人の友情には多くのドラマが詰まっています。

楊雄の経歴

楊雄の背景は複雑です。彼は元々、薊州の牢役人であり、死刑囚の斬首を担当する役職にありました。人生が暗い色合いに染まっていた彼は、未亡人の潘巧雲と結婚し、幸せな日々を送っていました。しかし、ある日、彼はならず者たちに襲われ、石秀によって救われることになります。この出会いが、彼にとって重大な転機をもたらしました。ふたりは義兄弟の契りを結び、楊雄が義兄として石秀を自宅に招き入れることとなりました。

石秀は楊雄の家に居候することになり、後に肉屋を始めることになりますが、楊雄の妻・潘巧雲が過去の夫との不倫に関与していることを知った興奮した石秀は、楊雄に真実を告げます。しかし、楊雄は石秀の忠告を信じずに彼を追い出し、結果として妻の裏切りを知ります。真実を知った彼は石秀に謝り、義弟の助けを得て梁山泊を目指す決意をします。

梁山泊での活躍

楊雄と石秀は、梁山泊へ向かう途中、祝家荘で捕らえられてしまいます。そこで楊雄は杜興の助けを借りて再び自由の身となりますが、その後の戦闘も多く経験します。梁山泊では、彼は歩軍頭領の第7位として歩兵を率い、多くの戦に参加しました。

戦争と友情

楊雄は様々な戦に参加し、特に大遼征伐や王慶戦ではその名を知らしめています。しかし、彼の人生は常に平坦ではなく、義弟の石秀を方臘との戦いで失うという悲劇も訪れます。

この出来事は楊雄にとって重い影を落とし、彼は自身の背中に瘡（痛々しいできもの）が生まれ、それが元で命を落としてしまいます。義弟を失った彼の心情は、読者にとって深い感動を呼び起こします。

楊雄の文化的背景

『水滸伝』の原型とも言われる『大宋宣和遺事』にも「賽関索・王雄」というキャラクターが登場しますが、楊雄のキャラクターはそれとは異なる役割を持っています。また、元曲に残る題名のみの作品『病楊雄』は、彼の存在を知らしめる一因となっています。楊雄の物語は、友情と裏切り、そして悲劇というテーマを通じて、中国文学の中で重要な位置を占めています。

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