極東委員会

極東委員会

極東委員会（Far Eastern Commission, FEC）は、第二次世界大戦での日本の降伏後、連合国が日本を占領管理するために設置された重要な政策決定機関です。アメリカ、中国、イギリス、ソ連、オーストラリア、カナダ、フランス、オランダ、ニュージーランド、インド、フィリピンの計11カ国の代表によって構成されました。強大な権限を持つ連合国軍最高司令官総司令部（GHQ/SCAP）も原則としてその決定に従うべきとされていましたが、実際には調整やアメリカ政府による介入が行われる場面もありました。

設立までの経緯

極東委員会の設立に至るまでには、アメリカ政府内部および連合国間での複雑な検討過程がありました。アメリカでは、1944年12月に国務省、陸軍省、海軍省の連携を図る三省間調整委員会（SWNCC）が設立され、日本の占領管理に関する検討が開始されました。翌1945年には、連合国間の協議や国内での対日方針策定が進められます。

当初、連合国の対日諮問機関として1945年6月に極東諮問委員会（FEAC）がワシントンD.C.に設けられました。しかし、主要国間での意見の対立、特にソビエト連邦の不参加などにより、FEACは十分な機能を発揮することができませんでした。その間、アメリカ政府のSWNCCが策定した対日方針が、連合国軍最高司令官であるダグラス・マッカーサー元帥に直接通達されるなど、アメリカが主導する形で占領政策が進められました。

FEACの機能不全を受け、イギリス政府はより強い権限を持つ機関への改組を提案します。この提案は、1945年12月のモスクワ三国外相会議で承認され、極東諮問委員会は極東委員会（FEC）へと改組されることが決定しました。新たな極東委員会は11カ国体制となり、特にアメリカ、中国、イギリス、ソ連の4カ国には拒否権が付与されました。

極東委員会の決定は、アメリカ政府を経由して連合国最高司令官に指令として伝達される仕組みでした。さらに、緊急時にはアメリカ政府が委員会の決定を待たずに指令を発出できる「中間指令権」が認められており、これはアメリカが連合国対日占領政策において優越的な地位を有していたことを示しています。

任務と権限

極東委員会の主な任務は、「極東委員会及聨合国対日理事会付託条項」に定められていました。これには、日本が遂行すべき義務に関する基準の作成および審議が含まれます。一方で、軍事行動の遂行や領土調整に関しては勧告を行わないこと、連合国軍最高司令官による占領軍指揮と日本の管理機構を尊重することも規定されていました。

具体的な活動としては、極東国際軍事裁判（東京裁判）において、構成各国が判事を一名ずつ選出する権利を有しました。また、日本国憲法の制定プロセスにおいては、新憲法草案の最終採決にあたって委員会の承認を必要とする決議を採択するなど、日本の根本的なあり方に関わる政策にも深く関与しました。さらに、労働運動に関する「労働運動16原則」を発表し、労働者の団結権や団体交渉権を保障する一方で、占領目的の妨げとなるような運動は禁止する方針を示しました。これは、1947年の二・一ゼネストが中止される要因の一つとなりました。憲法に関しては、1947年の日本国憲法施行後も、運用上の問題点についてGHQに改善を求めるなど、その権限を行使しました。

対日理事会

極東委員会の決定を実行する過程で、連合国軍最高司令官を補佐する機関として対日理事会が東京に設置されました。これは極東委員会の出先機関とも位置付けられます。対日理事会は、アメリカ、イギリス連邦、ソビエト連邦、中華民国の4カ国の代表で構成され、議長は連合国最高司令官の代理であるアメリカ代表が務めました。1946年4月から日本の主権回復が発効する1952年4月まで、隔週で計164回の会議が公開で行われました。対日理事会は、極東委員会の政策やGHQの実施する政策について、連合国各国が意見を表明し、協議を行う場としての役割を果たしました。

終焉

極東委員会は、日本の主権回復を定めたサンフランシスコ平和条約（対日講和条約）が1952年4月に発効したことに伴い、その役割を終え、廃止されました。約6年間にわたり、日本の戦後改革や占領政策の最高意思決定機関として機能しました。

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