二・一ゼネスト

二・一ゼネスト（1947年）は、共産党および左翼勢力による日本の労働運動の重要な出来事の一つであり、当時の吉田茂政権に対する大規模なゼネラル・ストライキを企図したものでした。この計画は、共産党が主導し労働組合の幹部たちが結集して民主人民政府の樹立を狙うものであり、ストライキの日程は1947年 2月1日に指定されていました。このゼネストは一般に「2.1スト」とも呼ばれていますが、実際には直前の大きな圧力によって実施は中止されました。

背景

1945年に終戦を迎えた日本では、戦後の混乱を背景に労働運動が急速に成長しました。GHQ（連合国軍最高司令官総司令部）は、日本にアメリカ式の民主政治を導入するために、労働運動の拡大を支援しました。結果として、労働組合員数は増加し、1946年には国鉄労働組合で50万人、全逓信従業員組合で40万人、民間企業の労組が合計70万人に達するなど、労働争議が続発する状況が生まれました。

その後、1947年1月、共産党は政府に対して本格的なストライキを実施する決定を下し、1月15日には全国労働組合共同闘争委員会が設立され、スト開始の期限を2月1日としました。その結果、国民生活や経済、その根幹を揺るがす可能性が高まり、吉田政権にとっての脅威が増していました。

ゼネストの決定

日本共産党の書記長、徳田球一は、労働者によるストライキの重要性を訴え、吉田内閣打倒を宣言しました。冷戦の影響も受け、アメリカは共産主義の拡大を警戒し、共産党の影響力が社会主義的な労働運動に乗じて高まることを懸念したのです。

占領当局は、過度な労働争議が米軍の運営に影響を及ぼすことを心配し始め、早くから対策を講じる姿勢を見せました。1月22日には、GHQの関係者が労組幹部を呼び出し、ゼネストの中止を命じるという事態にまで発展します。

ゼネストの中止

1月30日、GHQがストを中止させるよう改めて命じたところ、労組はこれを拒否しました。しかし、最終的に1月31日にはマッカーサー元帥の指令が下り、ゼネストは中止される運びとなりました。この中止により、労働組合の幹部はメディアを通じてストの中止を発表し、吉田政権への圧力を放棄する形となりました。実施されるはずだったゼネストは、影響力を持たないものとして終わったのです。

二・一ゼネストの影響

このゼネストの中止は、GHQの政策が労働者の権利意識を高めつつも、一度は強硬に取り締まる一環であったことを示しました。労働運動はその後も継続し、1948年に全逓信従業者組合が計画したゼネストもまた中止され、結果として労働者側の敗北に繋がったと評価されます。しかし、労働運動自体は根強く残り続け、後の政策に影響を与えることになります。

ちなみに、現在も語られる「公務員スト禁止」の背景にも、この二・一ゼネストの事件が大きく関与しています。また、労働組合の支持を失った共産党は、その後の活動に影響を及ぼし、さらに求心力を失うことになりました。日本の戦後政治史におけるこの出来事は、労働運動のあり方や政権との関係性を考える上での重要な視点を提供していると言えるでしょう。

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