楽園の瑕

『楽園の瑕』

『楽園の瑕』（らくえんのきず、原題：東邪西毒、英題：Ashes of Time）は、1994年に公開された香港の映画で、ウォン・カーウァイ監督がメガホンを取っています。この作品は、2008年に新たな編集が施され、タイトルが『楽園の瑕 終極版』とされてカンヌ国際映画祭でのプレミア上映を経て一般公開されました。

概要

本作は金庸の小説『射鵰英雄伝』に登場するキャラクター、悪役の「東邪」黄薬師と「西毒」欧陽鋒の若かりし頃を描いた外伝の形式をとっています。ウォン・カーウァイによるオリジナルストーリーが展開され、原作には存在しない新たなエピソードも織り交ぜられています。この映画では、洪七というキャラクターも登場し、彼は後に「九指神丐」と呼ばれる運命を辿ることになります。物語の内容は武侠映画ながら、単純な善悪の対立ではなく、剣士たちの愛や人生、死生観に焦点を当てた深い人間ドラマとして描かれています。

元々は二部作を予定していたものの、撮影が長引いたために短期間で別の作品『大英雄』が制作された経緯もあります。豪華なキャストが揃い、レスリー・チャンやトニー・レオン、ブリジット・リン、マギー・チャン、カリーナ・ラウなど名だたる俳優が出演しましたが、そのストーリーの難解さが影響し、興行的には振るわなかったとされています。しかし、本作はヴェネツィア国際映画祭で撮影賞を受賞するなど、評価は分かれました。

ストーリー

物語は12世紀の南宋末期、西域の砂漠に設定されています。殺し屋として生計を立てる欧陽鋒は、毎年春に旧友の黄薬師が訪れることを楽しみにしていました。その春、黄薬師は「酔生夢死」という酒を持参し、過去の苦しみを忘れたいという思いを抱いていました。しかし、過去を忘れることはできず、黄薬師は独りでその酒を飲み続けます。

彼はかつて燕国で出会った美しい貴公子、慕容燕との友情を育んだ過去を持ちます。王女としての立場に苦しむ彼女に対し、黄薬師は酔った拍子に冗談交じりに「妹を妻に迎えたい」と口にしますが、実は慕容燕は妹の仇討ちを計画していたのです。彼女は黄薬師に愛憎が交錯する複雑な感情を抱き、復讐の念に燃えます。

欧陽鋒はそんな彼女から二度にわたり、異なる依頼を受けることになり、混乱を極めます。その中で、彼は黄薬師が持参した「酔生夢死」を慕容燕に飲ませ、彼女は一時的に愛を告白しますが、やがて二人はこの相手が誰であるか分からないままの状態に陥っていきます。

さらに、少女が講じる復讐劇や剣士たちの運命も絡み合いながら、それぞれが抱える過去や愛の形、嫉妬や裏切りが描かれます。特に、弟の復讐を願う少女と、盲目の剣士の運命的な出会いが物語の大きなクライマックスを形成します。この剣士はやがて自らの運命に抗い、最後の戦いへと向かいますが、彼の選択や行動は彼自身のみならず、周囲の人々に大きな影響を及ぼすことになります。

結末

やがて、悲劇的な結末へとつながる一連の出来事は、登場人物それぞれの運命を交差させ、彼らの選んだ道がどのような影響を及ぼしているのかを幻想的に描き出します。特に、黄薬師が号泣するユーザーの心中や、愛や誠実さ、裏切りの虚しさが映し出されることで、観る者に深い印象を与えます。

これにより、単純な武侠映画とは一線を画した作品として、批評家の間でも注目され続けています。最後に、黄薬師が桃花島に引退し、「東邪」と名乗ることとなるその背景には、自己の苦しみを抱え続けた彼の人生が大きく関わっています。

スタッフ

• - 監督：ウォン・カーウァイ
• - 原作：金庸
• - 脚本：ウォン・カーウァイ
• - 音楽：フランキー・チェン
• - 撮影：クリストファー・ドイル
• - 製作総指揮：ジェフ・ラウ
• - 編集：パトリック・タム
• - 武術指導：サモ・ハン・キンポー

本作は、ウォン・カーウァイ監督が再割り当てした『楽園の瑕 終極版』として新たに公表されたバージョンもあり、続けて鑑賞する価値があります。

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