榎 (武蔵村山市)

東京都武蔵村山市に位置する地名、榎（えのき）についてご紹介します。この地域は武蔵村山市のほぼ中南部にあたり、現在の行政区分としては榎一丁目から三丁目に分かれています。郵便番号は208-0022が使用されています。古くからの歴史を持ちつつも、近年は大規模な再開発によってその景観が大きく変わりつつある地域です。

地理的には、榎地区は武蔵村山市の中央部よりやや南寄りに位置しています。周囲は、北側が本町、東側は学園と大南、南側は隣接する立川市の上砂町、そして西側は伊奈平や三ツ藤といった地域に接しています。この地区は主要な道路によって明確に区切られており、北側には東京都道5号新宿青梅線、通称「新青梅街道」が東西に走り、西側は東京都道59号八王子武蔵村山線、東側は東京都道55号所沢武蔵村山立川線（かつての「旧日産通り」として知られています）が通っています。

このエリアの地理的特徴として最も重要なのは、かつて広大な敷地を占めていた日産自動車村山工場の跡地です。2004年に工場が閉鎖された後、この広大な土地では大規模な再開発が進められました。現在、跡地の中心部には、地域最大の商業施設であるイオンモールむさし村山が立地し、多くの人々で賑わっています。また、地域医療を担う武蔵村山病院、自動車関連の施設であるカーミナル東京や東京日産新車のひろば村山店なども整備されました。工場の歴史的な痕跡を留める場所として、敷地内にはプリンスの丘公園が設けられています。しかしながら、再開発が完了したエリアがある一方で、跡地の半分以上は現在も未利用の広大な空き地のまま残されており、今後の更なる土地利用が注目されています。

「榎」という地名の起こりは、この地域に古くから伝わる「三本榎」という史跡に由来します。これは、かつて引又街道沿いに植えられていたとされる三本のエノキの大木を指し、武蔵村山市の史跡に指定されています。これらのエノキは、かつて宿場の入口近くにあり、旅人にとっての目印や休憩の場となっていたという伝承が残されています。

現在も「三本榎」と呼ばれるエノキは残されていますが、三本が全て同じ場所にまとめて存在するわけではありません。一本は榎三丁目にある乙幡家に、そして残りの二本は、すぐ東に隣接する学園一丁目の奥住家と加藤家に、それぞれ現存しています。これらの古木は、地域の歴史を見守り続けてきたシンボルとして大切にされています。また、「三本榎」という名称は、現代においても新青梅街道沿いの主要な交差点名として使われており、地名の由来となった史跡が現代の交通にもその名を残しています。

交通面では、先述の通り新青梅街道をはじめとする幹線道路が通っており、自動車でのアクセスが中心となります。

榎地区内には、多様な施設が立地しています。医療施設としては、地域の中核をなす武蔵村山病院があります。商業施設としては、大型複合施設のイオンモールむさし村山の他、青梅信用金庫武蔵村山支店、日用品などを扱うケーヨーデイツー武蔵村山店、靴販売のシュー・プラザ武蔵村山店などが営業しています。自動車関連では、カーミナル東京や東京日産新車のひろば村山店が集まっています。また、食品製造大手のわらべや日洋の東京工場および村山第二工場もこの地区に所在しています。地域の安全を守る施設としては、東京消防庁北多摩西部消防署武蔵村山出張所が設置されています。

榎は、歴史ある地名に由来を持ちながらも、近年における大規模な工場跡地の再開発によって、その姿が大きく変化しつつある地域です。主要幹線道路に面し、大型商業施設や病院などが集積したことで、生活利便性の高いエリアとしての性格を強めています。一方で、広大な未利用地も残されており、今後のさらなる発展の可能性を秘めた地域と言えるでしょう。

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