榎忠

榎忠（えのき ちゅう、本名：榎忠）は、1944年に香川県善通寺市で生まれ、16歳から兵庫県神戸市を拠点に活動する日本の現代美術家です。美術教育は20歳から通ったデッサン教室のみで、独学で美術の道を切り開いてきました。

1965年から二紀展に作品を発表し始め、1968年には初の個展「生成」を開催。この頃は幻想的な絵画作品を主に制作していました。しかし、公募展のあり方に疑問を持ち、1969年に鴨居玲らと洋画研究所〈0〉を設立、二紀会を脱退し、「グループZERO」を結成します。この頃から、『裸のハプニング』などの過激なパフォーマンスアートを展開するようになり、その作風は大きく変化しました。

1977年には、頭髪から陰毛まで体毛の半分を剃り落とした状態でハンガリーに入国しようとするパフォーマンス『ハンガリー国へハンガリ（半刈り）で行く』を発表し、その奇抜さで注目を集めました。1979年には、銃口が暴力団組長の自宅に向けられた巨大な大砲のオブジェ『LSDF』を発表し、さらに個展会場に酒場を設け、自身が女装して客をもてなす『BAR ROSE CHU』を展開するなど、挑発的かつユーモラスな作品を次々と発表しました。

パフォーマンスアートと並行して、金属加工工場での旋盤工としての経験を生かした機械彫刻やオブジェも多数制作しています。鉄の廃材や機械部品を素材とし、緻密な構成と力強い存在感を併せ持つ作品は、彼の重要な表現の一つとなっています。代表作には、1981年の『スペースロブスター P-81』、1985年の『2・3・7・8・TCDD・PROPAGATION』などがあります。2000年代以降は、阪神・淡路大震災の影響から、旋盤で加工した金属廃材を使った未来都市のようなオブジェを主に制作しています。

榎忠は、専業の美術家ではなく、一般の金属加工会社で旋盤工として定年まで勤め上げました。作品制作のために「半刈り」にした髪型も、そのままの状態で勤務していたというエピソードは、彼のユニークな人となりをよく表しています。彼の作品は、村上隆をはじめとする多くの現代美術家に影響を与えており、その独自性は高く評価されています。

受賞歴として、2008年に第32回井植文化賞、2009年に神戸市文化賞、2022年に兵庫県文化賞を受賞しています。

主な作品には、「裸のハプニング」（1970）、「ハンガリー国へハンガリ（半刈り）で行く」（1977）、「LSDF」（1979）、「BAR ROSE CHU」（1979）、「スペースロブスター P-81」（1981）、「原子爆弾」（1982－83）、「2.3.7.8 TCDD Propagation Dioxin 」（1985）、「AMAMAMA」（1986）、「地球の皮膚を剥ぐ」（1990）、「薬莢」（1991－92）、「ギロチン・シャー1250」 （1994－95）、「AK-47 / COLTAR-15」（2000－）、「マシンガンの行進」（2000）、「RPM-1200 」（2005）、「PATRONE drawing 」（2007）などがあります。

彼の作品は、豊田市美術館などのパブリックコレクションに収蔵されています。また、CHU ENOKI、札幌宮の森美術館 榎忠展、神戸新聞などの外部リンクからも、彼の活動を知ることができます。

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