鴨居玲

鴨居玲：闇を映す画家、波乱の生涯

1928年2月3日生まれ（1927年10月3日説あり）、1985年9月7日没。鴨居玲は、20世紀後半の日本を代表する洋画家の一人です。石川県金沢市（大阪府高槻市説あり）出身。下着デザイナーとして活躍した姉、鴨居羊子も有名です。彼の作品は、社会の闇や人間の深層心理を鋭くえぐり出し、見る者に強い衝撃を与えます。独特の画風と、生と死、そして創作活動における葛藤に満ちた生涯は、多くの人の心に深く刻まれています。

生涯と創作活動

金沢中学校（現・金沢高等学校）、金沢美術工芸専門学校（現・金沢美術工芸大学）を経て、画家としての道を歩み始めます。宮本三郎に師事し、二紀会同人として活動する一方、芦屋・田中千代服装学園で講師を務めるなど、多様な経験を積みました。

1950年代後半から1960年代にかけて、渡欧、二紀会退会、創作活動の行き詰まりなど、様々な出来事を経験します。南米、パリ、ローマを巡る旅は、彼の芸術観に大きな影響を与えたと考えられます。1968年の初個展では、姉を通じて知り合った司馬遼太郎との交流が始まり、彼の人生に新たな彩りを加えました。

1969年には昭和会賞と安井賞を受賞、その後はスペインのラ・マンチャ地方にアトリエを構え、創作に没頭します。しかし、1984年には心筋梗塞で倒れ、創作活動に行き詰まる苦悩を抱え続けました。最終的には、1985年、神戸市の自宅で排ガス自殺という悲劇的な最期を迎えました。享年57歳でした。

画風と特徴

鴨居玲の絵画は、社会の暗部や人間の内面世界を、独特の表現方法で描き出しています。特に目を描かない人物画は、特徴の一つであり、仏像の影響を挙げていました。晩年には「自分の滅びゆく自画像」を数多く描き続け、死への恐怖や、創作活動の行き詰まりを表現しました。サインも、初期のRei Kamoiから、1971年頃からRey Camoyへと変化しています。

出生の謎

彼の出生に関する記録には、いくつかの謎が残されています。生年月日、生地共に複数の説があり、出生届が出されていなかったため、戸籍謄本には「出生を認む」の記載があります。母親への聞き取りでも確実な情報は得られず、出生に関する情報は、いまだ謎に包まれています。長崎県平戸市出身説もあったものの、本人は後に否定しています。

主な作品

彼の代表作品には、『蠢（B）』『静止した刻』『サイコロ』『コメット』『おばあさん』『廃兵』『1982年 私』『出を待つ（道化師）』『道化師』などがあります。これらの作品は、日本の美術館に数多く収蔵されています。

鴨居玲のその後

没後30年を記念し、笠間日動美術館に「鴨居玲の部屋」が開設され、作品や遺品が展示されています。現在も多くの美術愛好家、研究者から注目を集め続け、彼の作品は、現代美術史における重要な位置を占めていると言えるでしょう。彼の画業、そして波乱に満ちた人生は、後世に多くの示唆を与え続けています。また、鴨居玲に関する書籍も多数出版されており、彼の生涯と作品を多角的に理解するための資料が豊富にあります。 彼の作品世界は、シュルレアリスム、幻視芸術、幻想絵画といったジャンルの要素も包含しており、神田日勝や深井克美といった他の作家との関連性も研究されています。

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