榎田卓央

榎田卓央（えのきだ たかひろ）は、1962年4月19日に鹿児島県鹿児島市に生まれた。地元である鶴丸高校を卒業後、慶應義塾大学法学部へ進学。1985年に同大学を卒業し、テレビ東京に入社した。テレビ東京がまだ東京タワースタジオに本社を置いていた時代に入社した、最後の世代の一人である。幼い頃にテレビで見たニュースキャスター、特に古谷綱正の姿に強い感銘を受け、アナウンサーを志したという。

テレビ東京に入社後、榎田氏はまずアナウンサーとしてのキャリアをスタートさせた。新人時代には、当時TBSテレビで深夜に放送されていた情報番組「情報デスクToday」に、他の在京民放キー局の新入社員と共に生出演した経験がある。その際、番組のサブ司会を務めていた小島一慶に対し、尊敬の念を伝え、「小島さんのようなアナウンサーになりたい」と語ったエピソードがある。その後、テレビ東京で当時アナウンサーを「パーソナリティ」と称し、社外からも幅広く人材を採用していた部署に配置転換された。この時期には、赤間裕子、日高充、四家秀治といった他局からの移籍組や、後の政治家である小池百合子（当時のワールドビジネスサテライト初代キャスター）など、様々な経歴を持つ人々が在籍していた。

アナウンサーとして、定時ニュース番組やスポーツニュース番組「スポーツTODAY」のメインキャスターなどを担当し、報道の現場で経験を積んだ。選挙特別番組や報道特別番組、さらには昭和天皇崩御といった歴史的な出来事にも携わっている。また、自ら現場に赴き取材を行うキャスターとしても活動。様々な事件や事故、災害報道の最前線に立ち、政治家への直接取材なども数多くこなした。スポーツ分野では特にテニス中継に深く関わり、全仏オープンテニスの衛星生中継では、女子シングルス決勝（シュテフィ・グラフ対マルチナ・ヒンギス戦）の実況を担当。この試合は、同局のテニス中継として初めて視聴率10％を超える記録を打ち立てたことで知られる。

アナウンサーとしてのキャリアを積んだ後、榎田氏はテレビ東京の営業部門へ異動。営業局、さらには関西支社の営業部副部長、部長を務めた。その後、再び本社に戻り、営業局業務推進部でCM考査担当部長を務めるなど、組織の様々な部署で要職を歴任した。

2009年にテレビ東京を退職した榎田氏は、翌2010年、教育界への全く新しいキャリアに踏み出した。横浜市が推進する民間人校長制度に応募し、横浜市立領家中学校の校長に着任したのである。校長としての活動の根底には、「すべては生徒の為に」という強い教育理念がある。子どもたちの立場を常に尊重し、彼らの成長を第一に考えた教育活動を推進している。話し方が非常に上手く、生徒や保護者、教職員からは聴きやすいという評価を得ている。領家中学校での任期後、2015年には横浜市立釜利谷中学校へ異動。その後も2017年には丸山台中学校、2020年には深谷中学校、そして2024年には並木中学校と、横浜市内の複数の公立中学校で校長を務めている。学校運営においては、生徒だけでなく、教職員や保護者といったすべてのステークホルダーを大切にする意識が高く、円滑な学校づくりに尽力している。

公務の傍ら、出身校である鹿児島県立鶴丸高校の同窓会活動にも熱心に参加しており、関東地区のOBOG組織である東京鶴丸会の会長を務めている。また、文化活動の振興にも力を入れており、平成26年からは神奈川県中学校文化連盟の会長を、さらに平成29年4月からは全国中学校文化連盟の会長を務めるなど、教育行政や文化振興の分野でもリーダーシップを発揮している。

プライベートな一面としては、母校である慶應義塾大学の近くに本店があることから、ラーメン二郎をこよなく愛していることで知られる。また、無類の餃子好きとしても有名である。

テレビ局アナウンサー、営業部門幹部、そして公立中学校長という異色のキャリアパスを歩み、さらに文化連盟の要職も兼任するなど、榎田卓央氏は多岐にわたる分野でその経験と手腕を発揮し、社会に貢献している人物である。

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