槇智雄

槇智雄（まき ともお）

槇智雄は、1891年（明治24年）に宮城県仙台市で生まれ、1968年（昭和43年）に逝去した日本の政治学者です。専門はイギリス憲法史および政治制度史であり、特に防衛大学校の初代校長として、その教育に大きな足跡を残しました。

生涯と学歴

槇智雄は、新潟県士族の父・槇武の仙台赴任中に生まれました。1903年（明治36年）に慶應義塾普通部に入学し、1914年（大正3年）には慶應義塾大学理財科を卒業しました。その後、1916年（大正5年）にはオックスフォード大学に留学し、バチェラー・オブ・アーツの学位を取得しています。

教育者としてのキャリア

帰国後、槇は1921年（大正10年）に慶應義塾大学予科の教員となり、1924年（大正13年）には同大学の教授に昇進しました。また、1925年（大正14年）には体育会理事、1932年（昭和7年）には高等部主任、1933年（昭和8年）には慶應義塾理事として小泉信三塾長を補佐するなど、要職を歴任しました。1942年（昭和17年）には慶應義塾大学予科主任を務めましたが、1947年（昭和22年）に小泉塾長の退任と同時に慶應義塾を退職しました。

保安大学校・防衛大学校での活動

1952年（昭和27年）、槇は保安大学校の教授に就任し、同校の校長も務めました。この人事は、吉田茂首相と親交のあった小泉信三の推薦によるものでした。1954年（昭和29年）には、防衛大学校の教授および校長に就任しました。槇はイギリス流のリベラリストとして知られ、軍事専門教育に偏ることなく、紳士としての素養を備えた士官の育成を目指し、リベラルアーツ型の教育を推進しました。この教育方針は、防衛大学校の教育の基礎を築いたと言えるでしょう。

白梅学園短期大学での活動

1957年（昭和32年）には、白梅学園短期大学の理事に兼任で就任し、1965年（昭和40年）に防衛大学校を退官した後、白梅学園短期大学の学長に就任しました。槇は、学長在任中に逝去し、多磨霊園に埋葬されました。

受章

1965年（昭和40年）には、叙勲二等授瑞宝章を受章し、1968年（昭和43年）には銀盃一個を賜り、従三位に叙せられました。

家族

槇智雄の父である槇武は、長岡藩士・槇小太郞の長男であり、慶應義塾を卒業後、奥羽日日新聞の主筆を務めました。その後、実業界で活躍し、複数の企業の役員を歴任しました。また、父方叔父の槇哲も実業家として台湾で活躍しました。弟の槇有恒は著名な登山家で、甥の槇文彦は建築家として知られています。岳父は小田切万寿之助です。

著書

槇智雄は、以下の著書を執筆しました。

『防衛の務め - 防衛大学校における校長講話』 (甲陽書房, 1965年、増補版1968年)
『米・英・仏士官学校歴訪の旅 - 自由民主国家の士官養成』 (甲陽書房, 1969年)
『防衛の務め　自衛隊の精神的拠点』 (中央公論新社, 2009年、新版2020年)


共著として
『渡欧だより 其2 渡欧だより(槙智雄) 渡米だより(槙哲）』岸田書店、1917年、槙英子編
『西洋史講座12 西洋政治制度史』ほか　雄山閣、1932年

参考文献

槇智雄の研究には、以下の文献が参照されています。

慶應義塾 『慶應義塾百年史』 別巻（大学編）、1962年。
池井優 『慶應義塾大学法学部政治学科百年小史 - 師友人物記』 慶應義塾大学出版会、1998年。
槇智雄先生追想集刊行委員会編 『槇乃実 - 槇智雄先生追想集』 防衛大学校同窓会槇記念出版委員会、1972年。

関連事項

槇智雄に関連する人物・事項は以下の通りです。

三河真木氏
井上成美（海軍兵学校長）

もう一度検索