槍の歌

『槍の歌』（古ノルド語: Darraðarljóð）は、アイスランドのサガ『ニャールのサガ』第157章に収録されているスカルド詩です。ヴァルキュリヤ（戦乙女）を主題としたこの詩は、全11スタンザから構成されており、『ヴァルキュリヤの歌』（古ノルド語: Valkyrjuljóð）や『ドッルズルの歌』（英語: Lay of Dörruðr）といった別名でも知られています。

詩の内容

『槍の歌』は、12人のヴァルキュリヤが、人間の頭を重しに、腸を糸に、矢を筬に、剣を杼にして、巨大な織物を織る様子を描写しています。彼女たちの織る織物は、オーディン神のために用意されたもので、クロンタルフの戦い（1014年）における戦死者を選ぶという、運命を決定する役割を担っています。

『ニャールのサガ』では、この光景はスコットランドのケイスネスでドッルズという人物が目撃した怪異として語られています。戦場で死者を導くヴァルキュリヤの神秘的な姿が、象徴的なイメージを通して表現されています。

ヴァルキュリヤの名前

詩の中では、12人のヴァルキュリヤのうち、以下の6人の名前が具体的に挙げられています。

ヒルドル (Hildr)
ヒョルスリムル (Hjörþrimul)
サングリーズル (Sanngríðr)
スヴィプル (Svipul)
グズル (Guðr)
ゴンドゥル (Göndul)

これらの名前は、それぞれが戦いにおける役割や特性を示唆していると考えられています。

後世への影響

『槍の歌』は、後世の文学作品にも影響を与えています。特に、シェイクスピアの戯曲『マクベス』に登場する「3人の魔女」の着想は、この詩に登場するヴァルキュリヤたちのイメージに由来すると指摘されています。運命を予言し、主人公を破滅へと導く魔女たちの存在は、『槍の歌』におけるヴァルキュリヤの役割と共通する要素を持っています。

まとめ

『槍の歌』は、北欧神話におけるヴァルキュリヤの姿を鮮やかに描き出したスカルド詩です。戦いの女神たちの神秘的な力、そして運命の残酷さを、象徴的なイメージを通して表現したこの作品は、中世の文学作品としてだけでなく、後世の文化にも大きな影響を与え続けています。

参考資料
Darraðarljóð in Old Norse from «Kulturformidlingen norrøne tekster og kvad» Norway.
Two versions of the original text
Njal's Saga -(The Story of Burnt Njal) - 『ニャールのサガ』第157章の英訳
One version and a translation in English

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