樅ノ木は残った (NHK大河ドラマ)

大河ドラマ『樅ノ木は残った』

『樅ノ木は残った』は、1970年1月から12月まで放送されたNHKの大河ドラマ第8作で、全52回にわたる長編作品です。このドラマは、江戸時代前期の4代将軍・徳川家綱の時代に実際に起きた伊達騒動をテーマにしています。原作は山本周五郎の小説で、脚本には茂木草介、演出には吉田直哉が携わりました。作品は争いのない時代における人間の悲しみや苦悩を巧みに描写しており、視聴者に深い思索を促しています。

企画・制作の背景

本作では、従来悪役とされてきた原田甲斐の行動を「藩のために考慮した」として評価を転換させる試みがされています。この独自の解釈は、視聴者に新たな視点を提供しました。物語の初めでは、甲斐の恋人・たよとの切ない関係を設定することで、甲斐の青春時代をオリジナルストーリーとして描写しています。この構成は、甲斐が本心を隠し続け汚名を受け止める理由を探る中で生じたものです。

本作品の演出方法として、一人のチーフディレクターの下に若手ディレクターを配置するという新たな試みが導入されました。この方式は、以降の大河ドラマにおける山脈となり、ディレクターたちに責任を持たせず経験を積ませる意図がありました。クレジットでは、全スタッフの名前を毎回明記し、作品への貢献を高く評価する姿勢が見て取れます。

ご当地ブームの先駆け

仙台を主な舞台とした本作は、観光地とのタイアップを始めた先駆的な作品でもありました。「樅の木」が象徴的に使われ、その木が残る様子が本作のテーマと結びついています。さらには、オープニングシーンは竹林に揺れる能面の映像が組み合わさり、印象的な演出となっています。この撮影には細心の注意が払われ、文化財が大切に扱われました。

反響と評価

初回の視聴率は27.6%で、最終的には平均視聴率21.0%を記録しました。合戦がないにもかかわらず高い視聴率を維持し、一部の視聴者からは「番組が暗い」との意見も見られましたが、伊達家の内紛を緻密に描写した重厚な作品として高く評価されています。特に、初期の大河ドラマの中でも傑作として名を馳せています。

登場人物とその特徴

ドラマには多くの魅力的なキャラクターが登場します。

• - 原田甲斐（平幹二朗）は従来の作品で悪役とされてきた立場から、藩の名臣として描かれます。彼の葛藤や思いがストーリーの大きな軸となります。
• - 宇乃（吉永小百合）は、両親を亡くした後に失声症になるキャラクターで、物語の重要な要素を成しています。
• - たよ（栗原小巻）は、甲斐の恋人であり、彼との悲恋により心が壊れていく様子が描かれています。

これらの人物は、それぞれの運命や選択によって物語に深みを与えています。

放送と現在の状況

本作は毎週日曜日にNHKで放送され、その後の総集編は1970年の大晦日に全貌をまとめた形で放送されました。2011年には、作品の録画テープが宮城県の郷土資料館で見つかるなど、歴史的な価値を再認識されています。作品自体は、DVDとして発売され、今もなお多くの人々に観られています。作品を通じて、日本の歴史や文化を見つめ直す機会を提供するドラマです。

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