樋口広芳

樋口広芳：日本の鳥類学をリードする研究者

樋口広芳氏は、1948年神奈川県横浜市生まれの日本の鳥類学者であり、農学博士の学位を取得しています。東京大学名誉教授、慶應義塾大学訪問教授などの要職を歴任し、日本の鳥類学、そして生物多様性研究において、長年にわたり多大な貢献を果たしてきた第一人者です。

学術研究と教育への貢献

樋口氏の研究は、多岐に渡ります。初期の研究では、伊豆半島と伊豆諸島に生息するヤマガラの繁殖生態や採食生態、形態上の地域差などを詳細に調査。この研究は、彼の博士論文「ヤマガラParus varius Temminck & Schlegelの生態および形態に関する地理的変異」に結実しました。

その後、米国ミシガン大学動物学博物館客員研究員として、著名なロバート・B・ペイン教授の下で研究活動に従事。コウウチョウの托卵生態やササゴイの独特な採食方法である「投げ餌漁」といった、鳥類の興味深い行動生態に関する知見を深めました。

帰国後は、日本野鳥の会研究センター所長として希少鳥類の保全に尽力。特に、渡り鳥の衛星追跡調査を先駆的に実施し、渡りルートや行動様式に関する貴重なデータを取得しました。

東京大学大学院教授としては、長きにわたり野生動物学研究室および生物多様性科学研究室で教育・研究活動に携わり、多くの学生を育成。生物多様性の意義、メカニズム、進化、保全に関する研究を推進し、日本の生物多様性研究の基盤構築に大きく貢献しました。

東京大学退職後も、慶應義塾大学において特任教授、訪問教授として研究活動を継続。生物多様性の理解促進と保全に向けた啓発活動にも積極的に取り組んでいます。

受賞歴と著書

樋口氏の研究業績は高く評価されており、数々の賞を受賞しています。日本動物学会Zoological Science Award、藤井良三賞（2度受賞）、野生生物保護功労者「環境大臣賞」、山階芳麿賞、田村賞など、その功績は多方面から認められています。

さらに、一般向け書籍の執筆にも精力的に取り組んでおり、『鳥の生態と進化』『鳥たちの生態学』『保全生物学』など、多くの著書や翻訳書を発表。これらの著作は、鳥類学や生物多様性への理解を深める上で、一般読者にも大きな影響を与えています。専門性の高い内容だけでなく、一般読者も容易に理解できるよう配慮した分かりやすい文章も特徴です。

鳥類学者への道

樋口氏が鳥類学者を志したのは高校時代。清棲幸保氏の『日本鳥類大図鑑』に感銘を受け、将来の進路を鳥類学者に定め、清棲氏が在籍していた宇都宮大学への進学を決意した逸話は有名です。

まとめ

樋口広芳氏は、卓越した研究者としての能力と、それを社会に還元する熱意を併せ持つ、日本の鳥類学を代表する科学者です。その研究成果は、日本の鳥類学のみならず、生物多様性研究全体に大きな影響を与え、未来世代への貴重な遺産となっています。彼の今後の活動にも期待が高まります。

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