樋笠一夫

樋笠 一夫の人生と業績

樋笠一夫（ひがさ かずお）は、1920年3月20日に香川県坂出市で生まれた元プロ野球選手であり、コーチとしても活躍しました。彼は日本プロ野球史上、初めて「代打逆転満塁サヨナラ本塁打」を打った選手として、その名を広く知られています。

経歴

樋笠は旧制高松中学に在籍していた1934年に夏の甲子園に出場し、ベスト8まで進出しました。しかし、準々決勝では川上哲治を擁する熊本工に敗れてしまいました。中学卒業後は陸軍騎兵学校に進み、そこから職業軍人としての道を歩みました。彼は陸軍大尉として南方方面での輸送指揮官として任務に従事し、戦後は広島鉄道局や三井鉱山美唄で野球人生をスタートさせました。

その後、香川の尽誠学園高校で監督として指導しつつ、社会や体育、珠算の教師としても地域に貢献しました。1949年末、広島カープの初代監督・石本秀一からの勧誘を受け、1950年に25万円の契約金で広島カープに入団しました。新人ながらもクリーンナップに位置し、21本塁打、72打点を記録し、チームの二冠王として活躍しました。

樋笠は、当初は1年契約でしたが、その活躍を受けて契約更改が行われ、給料が倍増することも決まっていました。しかし、球団の財政難や年齢の影響もあり、彼は広島を退団し地元に帰郷。友人と共に「樋笠しょうゆ製造業」を立ち上げましたが、読売ジャイアンツからの熱心な勧誘により、1951年に入団しました。この時、広島でのファンからの反発を受けつつも、彼は新たな挑戦を選びました。

巨人での活躍

巨人では、名古屋戦で代打としてエース杉下茂から本塁打を放ったことから始まり、次第に代打の切り札として存在感を高めていきます。1952年には代打として31回起用され、打率.346という成績を挙げ、リーグトップの成功率を記録しました。1953年以降はレギュラーとして試合に出場することが増え、1956年3月25日には中日戦で日本プロ野球史上初の「代打逆転満塁サヨナラ本塁打」を放ちました。この劇的な試合は、「ドラマチックデー」として記念されています。

その後も1957年まで現役を続けましたが、この年の後に引退。その後はコーチとしてもキャリアを積み、近鉄バファローズの打撃コーチや寮長を歴任しました。さらに、第一広告社で校正部長などの役職に就き、1975年に定年を迎えました。その後も商社で働き続けましたが、時折、彼が打った本塁打の話が出ることが多かったといいます。

人物とエピソード

樋笠は伝統的な装いを好み、特にユニフォームの下には褌を着用していたとされています。また、晩年は西宮市で一人暮らしをしながら社会福祉活動にも貢献しました。彼は「何事も積極的であれば道は開かれる」との信念を持ち、自身の行動力で知られていました。

2007年6月17日、樋笠は87歳で亡くなりました。彼のプロ野球における功績と魅力は、今なお多くのファンに愛されています。

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