横井也有

横井也有：尾張藩士の生涯と多様な才能

横井也有(よこい やゆう、1702-1783)は、江戸時代の尾張藩に仕えた武士であり、国学者、俳人としても知られた人物です。多彩な才能を持ち、多様な文化活動に携わった彼の生涯を紐解いていきましょう。

華麗なる経歴：武士としての活躍と多芸多才

1702年、尾張藩御用人、大番頭を務めた横井時衡の長男として誕生した也有は、幼名辰之丞、通称孫右衛門と呼ばれていました。諱は時般、俳号は野又・野有を経て也有となり、永言斎・知雨亭といった別号も用いました。北条時行を祖とする家系に生まれた彼は、1727年に家督を相続。その後、1741年には大番頭兼用人、1748年には寺社奉行を兼任するなど、藩政の中枢で活躍しました。

しかし、彼の才能は武道のみにとどまりません。俳諧、俳文、武芸、平家琵琶、謡曲、書画、詩歌、狂歌など、多岐にわたる芸道に精通し、儒学にも造詣が深かったと伝えられています。特に俳諧においては、各務支考の一門である武藤巴雀や太田巴静らに師事し、美濃派の影響を受けた作風で知られています。27歳で著した『訪以之辞』が俳文における初期作品であり、33歳で刊行された『木の本』に初出の俳句を発表しました。彼の句は川柳風の作風で、前句付の影響も指摘されています。また、尾張藩士で絵師として名高い内藤東甫とは、俳画で数々の合作を残し、東甫による也有の肖像画も現存しています。

元禄赤穂事件と独自の視点

彼の著作『野夫談』において、元禄赤穂事件に関する独自の解釈が示されています。吉良義央について、討ち入りの際に抵抗せず、相手の切腹も求めていないことから、「仇ではなく恩人」と極論を述べている点が注目されます。これは、当時としては異例な、事件に対する独自の視点と言えるでしょう。

知雨亭での晩年：風流人の境地

1754年、53歳で病を理由に隠居した也有は、現在の名古屋市中区上前津に移り住み、草庵「知雨亭」で余生を過ごしました。天明3年（1783年）、82歳で生涯を閉じます。隠居後は、吉見幸和、松平君山、堀田六林らと交流を続け、俳文、漢詩、和歌、狂歌、茶道などに親しみ、風流人として晩年を過ごしたと記録されています。

大田南畝との関わりと『鶉衣』の出版

也有の俳文集『鶉衣』は、大田南畝によって刊行されました。南畝は『鶉衣』の序文で、長楽寺で偶然也有の「借物の弁」を見つけて感銘を受け、その後、尾張出身者を通じて也有の作品を探し求めたものの、彼の死後にようやく著作を手に入れたと記しています。彼の作品が埋もれることを惜しみ、南畝自らが刊行に尽力したことで、『鶉衣』は世に出ることとなったのです。

健康十訓：今も伝わる生活の知恵

也有は、「健康十訓」と呼ばれる健康法を提唱したとされています。少肉多菜、少酒多果、少車多歩など、現代にも通じる健康的な生活習慣が記されています。

主要な著作

彼の著作には、『鶉衣』(俳文集)、『蘿葉集』『漏桶』『垤集』(独吟連句)、『管見草』『美南無寿比』(俳論)、『蘿隠編』(漢詩文)、『行々子』(狂歌集)などがあります。『鶉衣』に収録された「化物の正体見たり枯尾花」は、「幽霊の正体見たり枯尾花」として広く知られる名句となりました。

後世への影響と関連事項

彼の先祖が築城した赤目城、創建した西音寺、そして名古屋市東山動植物園にある「也有園」など、彼のゆかりの地は現在も残されています。彼の生涯と業績は、後世に多くの影響を与え続けているのです。

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