俳画

俳画：俳句と絵画の融合芸術

俳画とは、簡素な絵画に俳句を添えた作品です。俳諧師が自身の作品に添える「自画賛」や、他者の句に添えて描くものとして広く知られています。しかし、俳画の成立過程は多様で、絵が先にあり、それに合わせて句が作られるケースや、絵と句が同時に創作されるケースも存在します。さらに、俳句がなくても俳諧の趣を表現した絵画全般を指す場合もあります。

「俳画」という名称は、渡辺崋山の『全楽堂俳諧画譜』で初めて用いられたとされています。それ以前の与謝蕪村などは、同様の作品を「俳諧物の草画」と呼んでいました。

俳画の歴史：中世から現代まで

俳画の起源については諸説ありますが、野々口立圃が『立圃筆休息歌仙図』などの作品を残したことで、その創始者として広く知られています。しかし、そのルーツは中世の詩画軸にまで遡ることができ、松花堂昭乗は牧谿の画風を受け継ぎ、俳諧の趣のある絵画を制作し、立圃にも影響を与えたとされています。

談林俳諧においては、井原西鶴も「画賛十二ヶ月」など俳画の連作を残しています。松尾芭蕉も多くの俳画作品を残しており、一蝶や許六との合作作品も存在します。芭蕉門下の俳人も多くが俳画を制作しており、芭蕉没後には、芭蕉を顕彰する多くの俳画が描かれています。

近世後期には、文人画家として名高い与謝蕪村が、『おくのほそ道図屏風』や『若竹図』などの作品を制作し、俳画を芸術の新たな様式として確立しました。蕪村は写生的な俳句を多く残しており、その画風は写実的で自然の美を捉えたものでした。文化文政期には、渡辺崋山のように画家としての経歴を持つ者だけでなく、小林一茶のような素人俳人も素朴な俳画を残しています。

近代に入ると、正岡子規が素朴な草花の水彩画に句を添えた作品を制作し、その門人も俳画を制作しましたが、その後は俳画を手がける俳人は減少していきました。

代表的な俳画作家

俳画の歴史には多くの優れた作家が名を連ねています。代表的な作家として、以下の人物を挙げることができます。

野々口立圃 (1595-1669)
松尾芭蕉 (1644-1694)
宝井其角 (1661-1707)
小川破笠 (1663-1747)
白隠慧鶴 (1686-1768)
彭城百川 (1697-1752)
加賀千代女 (1703-1775)
与謝蕪村 (1716-1784)
仙厓義梵 (1750-1837)
松村月渓 (1752-1811)
酒井抱一 (1761-1829)
横井金谷 (1761-1832)
小林一茶 (1763-1828)
三浦雲居 (1831-1912)
岡本癖三酔 (1878-1942)
奥田雀草 (1899-1988)

これらの作家は、それぞれの個性的な画風と俳句によって、俳画の世界に多様な表現をもたらしました。

関連文献

* 『俳画粋伝－江戸の風韻』 瀬木慎一 （美術公論社、1988年）

俳画は、俳句と絵画の融合によって生まれた独特の芸術形式です。簡素ながらも奥深い表現力を持つ俳画は、日本の文化史において重要な位置を占めています。

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