横断研究

横断研究とは

横断研究（おうだんけんきゅう、Cross-sectional study）とは、医学、社会科学、生物学などの分野で用いられる観察研究の一種で、特定の時点における集団のデータ（横断データ）を分析する研究デザインです。ある瞬間の状況を捉えるため、スナップショットのように、その時点での状況を把握するのに適しています。

横断研究の特徴

記述的な研究: ある時点での集団の特徴を記述するのに用いられます。因果関係を証明することはできません。
横断データの分析: ある特定の時点において収集されたデータを分析します。
有病率の評価: 急性疾患や慢性疾患の有病率の評価に用いられることが多いです。

他の研究デザインとの比較

症例対照研究: 特定の疾患を持つ人と持たない人を比較する研究。横断研究は集団全体のデータを見るのに対し、症例対照研究は特定の疾患を持つ人に焦点を当てます。
縦断研究: 同じ集団を一定期間にわたり複数回観察する研究。横断研究は一時点のデータを用いるのに対し、縦断研究は時間経過に伴う変化を捉えることができます。

横断研究の利点

安価で実施可能: 日常的に収集されたデータを利用することで、費用を抑えて大規模な研究を行うことができます。
仮説の構築: 既存のデータから関連性を見つけ、新たな研究の仮説を立てるのに役立ちます。

横断研究の欠点

因果関係の不明確さ: 時間的な前後関係が不明確なため、因果関係を特定することはできません。
交絡因子の影響: 測定されていない交絡因子が結果に影響を与える可能性があります。
想起バイアス: 過去の出来事に関する質問では、参加者の記憶に依存するため、バイアスが生じる可能性があります。

横断研究の活用

医学研究

横断研究は、ある時点での疾患の有病率を評価するのに役立ちますが、疾患の原因や介入の結果を評価することはできません。例えば、ある地域における特定の疾患の有病率を調べたり、生活習慣と健康状態との関連を調べることができます。

経済学

経済学では、ある時点での変数間の関係を分析するために使用されます。例えば、所得、金融資産、人口統計学的要因が貨幣需要にどのように影響するかを調べることができます。

集計データの弱点

横断研究では、個人レベルのデータだけでなく、集団レベルのデータ（例えば、国勢調査データ）も利用されることがあります。集計されたデータを使用する際には、生態学的誤謬や原子論的誤謬に注意する必要があります。

生態学的誤謬: 集団レベルのデータに基づいて、個人レベルの情報を推測すること。
原子論的誤謬: 個人レベルのデータの集計に基づいて、集計された数に関する仮定をすること。

例えば、都市レベルでは乳幼児死亡率と世帯収入の間に相関関係がないとしても、個人レベルでは強い相関関係がある可能性があります。

横断研究を行う際の注意点

研究目的に合ったデータを選択する: 日常的に収集されたデータは、特定の研究目的に合わない場合があります。
交絡因子の影響を考慮する: 交絡因子によって、見かけの関連性が誤って解釈される可能性があるため、注意が必要です。
データの限界を理解する: 集計データを使用する際には、生態学的誤謬や原子論的誤謬に注意が必要です。

横断研究は、特定の時点における集団の状態を把握するのに有効な手法ですが、その限界を理解した上で適切に活用することが重要です。

参考資料

Study Design Tutorial - Cornell University College of Veterinary Medicine

もう一度検索